今、わたしたちは過去に例のない不安の時代を生きています。 人類の歴史を振り返ってみると、「不安を喚起する脅威」の大半は具体的なものでした。 「自然災害」や「捕食動物」や「敵対部族」等々、明確な対象が存在していました。たまに悪さをする“精霊”などがいましたが、呪術師がそれをなだめたりしていました。 しかし、近代以降、特に現代においては「不安を喚起する脅威」は明確ではありません。それは「日常生活のあらゆる場面にふいに顔を出す化け物のようなもの」で、ヒトとモノの過剰な流動性と技術革新によって複雑化するリスクがもたらす金融不安、雇用不安、社会不安、健康不安などの常態化です。 ある有名な社会学者は、その捉えどころのなさと、変化のスピードから「液状不安」(Liquid Fear)と評しました。ささいな出来事に「破滅的な兆候」を見いだす、パラノイアック(妄想症)的な感受性が当たり前になったのです。 ちま