「この村で、核兵器もつくっていたかもしれない。あれだけの無差別殺人を犯したのだから、死刑執行は当然だ」。熊本県波野村(現・阿蘇市)へのオウム真理教進出に反対する「波野村を守る会」の中心メンバーで、村長も務めた岩下一之信さん(78)は話す。 教団が阿蘇山のはずれにある原野約15ヘクタールを手に入れたのは、1990年5月。岩下さんは、教団が波野村に先がけて土地を手に入れた当時の山梨県上九一色村を訪ねて調べた。「許可なく施設の建設を進める。とんでもない団体だ」と感じた。 松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚に対する東京地裁判決によると、この年の2月にあった衆院選で松本死刑囚らが惨敗、4月ごろになって無差別大量殺人の実行を教団幹部らに宣言した。波野村への進出は、その直後だった。後に、波野村の施設で90年秋ごろから、毒ガス「ホスゲン」などの製造工場をつくろうとしていたことが明らかになる。 実際、土地を入手し