『モバイルハウス 三万円で家をつくる』は、坂口恭平が建国した新政府プロジェクトの前日譚であり、「家」に関する思想書でもある。 坂口さんのモバイルハウスという試みは、実に素朴な疑問から始まる。 「なぜ、人間の生活に欠かせないはずの『家』を手に入れることが、こんなにも困難なのか」 家は、多くの人にとって人生で最も高額な買い物だ。ローンを組めば、そのために何十年間も働くことになるし、賃貸でいたとしても住み続ければ何千万の支出になる。 みんなが受け入れている、ごく普通のことだ。でも、坂口さんはそこから疑ってみる。 憲法によって、国民には「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が保障されているはずなのに、実際は、家を持てる人と持てない人がいる。さらに家賃が払えない人は路上生活者になってしまう。それは、普通に考えたらおかしいことだ、と坂口さんは思った。 ある日、ホームレスの家を調査していた坂口さんは