インタビューに答える日本ペンクラブ会長で作家の桐野夏生さん=東京都千代田区で2022年2月17日、吉田航太撮影 「苦しみ悩む人たちの中に入って、彼らの物語を書くしかないと思っています」。小説を生み出す自らの取り組みを、作家の桐野夏生さん(70)はそう話す。男性中心の格差社会であえぐ女性たちの怒りや痛みをすくい取り、時に衝撃的な筆致で表現してきた。最新刊でも若い女性の貧困と生殖医療に焦点を当てる。一方、昨年には日本ペンクラブ初の女性会長に就任。女性の仕事やジェンダー格差、ネット上での中傷などに関する発信にも意欲を見せている。桐野さんの“現在地”とは。詳しく聞いた。【和田浩明/デジタル報道センター】 若い貧困女性の代理母で新作 3月4日刊行の新刊「燕(つばめ)は戻ってこない」(集英社)。まず、物語のあらすじを簡単に説明しておこう。 主な登場人物の一人は、東京都内で暮らす地方出身の契約社員で29