腕時計や電卓、電子楽器を主力商品とする電機メーカー「カシオ計算機」(CASIO)。その社名が示すとおり、樫尾(かしお)家の4兄弟、忠雄、俊雄、和雄、幸雄が創業した会社だ。中でも製品開発を担当していた次男・俊雄は、生涯で313もの特許を取得した偉大な発明家。日本のエレクトロニクス産業の発展に貢献した偉人の歩みと功績をひもといてみよう。 エジソンに憧れて発明家を志す 「“必要は発明の母”ではなく“発明は必要の母”なんです──」 これは樫尾俊雄の発明哲学として今なお語り継がれている言葉だ。 「ユーザーが求めているものを作るのでは遅過ぎる。ユーザーがまだ気付いてもいないような必要性を呼び起こす発明をしなければならない」ということ。 実際に、常に時代の先を行く独創的な商品を生み出してきた発明家の矜持(きょうじ)が垣間見える、重みのある言葉である。 樫尾俊雄は1925(大正14)年、東京生まれ。生涯で