1984年の連載開始以来、一貫して日本社会が抱える問題の本質を暴き続けてきた作家・村上龍のエッセイ「すべての男は消耗品である。」の14冊目となる最新刊『ラストワルツ』(KKベストセラーズ/刊)が発売された。 この刊では、作家自ら「ずいぶんとトーンが変わってきた」と述べているように、自身の老いの自覚と、それに伴う考え方や行動の変化に触れる箇所が多く見られる。かつてこのシリーズは、モナコやカンクン、ニューヨークなど海外の滞在先から原稿が送られてきて、日本社会の閉塞状況を一刀両断するのが定番だった。しかし最近は活動の重点が小説執筆とTV『カンブリア宮殿』など国内に置かれ、海外に出ることは少なくなっているという。そのぶん若さにものをいわせた論調から、過ぎた歳月の経験を踏まえる論調へと変わったとしてもなんの不思議もない。むしろ老いによってものごとへ向ける眼差しにいっそう深みが加わったといえる一冊だ。