※この記事は『サライ』本誌2018年8月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。(取材・文/鹿熊 勤 撮影/宮地 工) ──著作の出版や復刊が相次いでいます。 「この前数えてみたら、累計で36冊くらいになっていました。けれど、僕は物書きとして飯を食ってきた人間ではありません。本が出ているといっても、評論や思想史といったものは絶版になりやすい。つまり儲からない本です。日本の近代史を外国人の視点、それも幸福を軸に素描した『逝きし世の面影』(2005年)は、平凡社ライブラリーに入ってから売れましたけどね。忙しくなったのは、これが思いのほか話題になってからです。最近は年に2、3冊くらい出しているでしょうか」 ──いずれも中身の濃い本ばかりです。 「人間、生きていればいろんな本を読みますし、影響を受ければ自分なりの考えももつようになります。プロの物書きという意識は今もありませんが、書