なぜ共産党と共産主義を全面否定するのか これには当時の田中義一首相とその内閣が専制的な体質で、同年2月に行われた初の普通選挙でもあからさまに選挙に干渉。不評を買っていたことも関係している。この事件自体、政権の仕掛けとする見方もあったほど。時事新報「過激運動と厳法の効果」が、逆に「右傾主義」にも警鐘を鳴らしたのと、国民新聞と報知新聞が、共産党と切り分けて、無産政党の存在意義を強調したのが目立った程度だった。 「三・一五事件」のきっかけとなった1928年2月の初の普通選挙の結果(東京朝日新聞) しかし「秘密結社」「陰謀」「国体の変革」と言いつつ、なぜ共産党と共産主義を全面否定するのか、各新聞とも明確な指摘はない。 この点について、纐纈氏の戦後のインタビューも収録している下里正樹・宮原一雄「日本の暗黒・実録・特別高等警察第1部『五色の雲』」は、取り締まる側の内務省警保局保安課の課員からも疑問の声