一度、チカが俺のことを忘れた事があった。昼間、彼女が大学にいる時にメールを送ったんだが返事が素っ気ない、というか敬語だ。家に帰ってSkypeで話をしてみると、俺の名前は覚えてはいるんだが、FPSの同じクランのメンバーという以上の認識が無いらしい。チカじゃないんじゃ無いかなとも考えたが、FPSはチカしかやらないし、俺以外の学校生活の記憶とかチカのもので間違いない。今まで俺たちはこんな事があったんだよって説明すると 「ホントですか~!?私を騙そうとしてるんじゃ無いですか?」 と抜かしやがる。どうしたら信じてもらえるかなと思いを巡らせた。そういえば、エリの誕生日に文庫本用のブックカバーをあげた。その色と模様を伝えてみた。 「確かにそのブックカバー持ってます、鞄に入ってますけど、なんで知ってるんですか?」 彼女は明らかに怪訝そうな顔をした。 「だから俺がエリにあげたんだって」 「私がテンさんに別人