≪ 前家路に着いた俺たちには、未だくすぶっている気持ちがあった。 わざわざ町にまで出向いて色んな人に尋ねたのに知的好奇心をなんら満たせず、それでも持ち帰ったお土産は妙に鬱屈とした疑念くらいしかない。 もちろん、真実があの町から得られなくても、『あいつ』についてのアテはまだ残っている。 タケモトさんがいる、というより位しかいない。 弟もそれを感じたのか、ずっと黙りっぱなしだ。 タケモトさんが『あいつ』かもしれない、その可能性を知ってしまった今となっては、『あいつ』について尋ねるなんて俺には心苦しくて無理だった。 他人の過去に、人生にあまりにも踏み込みすぎた、弟を無理やりにでも止めるべきだった、と俺は後悔していた。 だが突如、意を決したかのように弟は立ち上がり、俺に向かって声高に言う。 「タケモトさんに聞いてみよう」 やっぱり、そうくるのか。 「分かっているのか。俺たちの求める答えなんて、そこ