トランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるには性別適合手術が必要だと定める「性同一性障害特例法」。二つの「手術要件」のうち、生殖能力の喪失を求める「生殖不能要件」について、最高裁大法廷が憲法違反との判断を示しました。 特例法は当事者たちのどんな思いからできたのか。激化するトランス差別にどう向き合えばいいのか。2003年の法制定当時にロビー活動に携わり、現在も社会への発信を続ける野宮亜紀さんに聞きました。 ――法律ができる前の1990年代、当事者を取り巻く状況はどのようなものでしたか。 90年代の前半まで、性別への違和感を持つ人たちのありようは、一般的には「趣味」や「嗜好(しこう)」の問題と受け止められていました。「人権」の問題として捉えて、社会的な議論が起きるようになったのは、90年代の半ば以降のことです。 ――当事者運動はいつごろから始まったのでしょうか。 94年7月に虎井まさ衛さんがミニ