米国で先住民女性が受ける深刻な暴力の実態に光が当たりはじめている。殺害や人身売買などが疑われる失踪事件が際立って多く、背景には差別や迫害の歴史が横たわる。米連邦捜査局(FBI)が行方不明者リストを公開するなど当局も事態改善に歩み出したが、先住民は「根本的な解決には偏見を取り除かなければならない」と主張する。(ニューヨーク・杉藤貴浩) 米国の先住民問題 現在の米国に渡った欧州人(白人)は、植民地期から先住民と衝突。米独立後は領土を西に広げる過程で先住民を駆逐し、土地を奪った。伝染病の影響もあり、先住民の人口は激減。度重なる居住地の変更や差別、同化政策の失敗で、2018年の先住民の貧困率は約25%と、白人(約8%)や黒人(約21%)を上回る。アルコールや薬物依存も多い。20年の国勢調査では、先住民の血を引く人口は約970万人で全体の約3%。政府が認める部族は500を超える。