新聞やテレビで児童虐待のニュースを目にするたび、そのあまりの酷さや切なさに目を背けたくなります。残念なことに、児童虐待の通告件数は全国で10万件を超すほどに急増しています。「児童虐待はどこか別の世界で行われている、自分とは無関係のこと」。ついそう思ってしまうかもしれませんが、実はすぐそばにある問題なのかもしれません。 児童虐待を“自分事”として考えさせてくれるのが、8月に刊行された椰月美智子(やづきみちこ)さんの小説『明日の食卓』(角川書店)。「愛する息子を殺してしまう――。一歩間違えたら、自分も同じだったかもしれない」という強烈なフレーズとともに紹介されるこの作品には、3人のお母さんが登場します。専業主婦として日々の穏やかな幸福を大事にするあすみ、二人の小学生男子を育てながら仕事にも奮闘する留美子、シングルマザーとして必死で一人息子を育てる加奈。この3組の「石橋家」と3人の「ユウ」という