「お父さん、あのビデオ反則や」。 娘は既に泣いている。 今年のオリックス最終戦は本拠地京セラドーム。試合後には小谷野の引退セレモニーが行われた。セレモニーでは冒頭、引退記者会見の様子からはじまる、これまでの小谷野の活躍を振り返るビデオ映像が流された。どんなに大差の試合でも「今日のナンバーワン!」の一言と共に、恰も好試合であったかのようなビデオ映像を流すオリックスの広報である。十分すぎる実績を積んだ「熱い男」、小谷野の選手生活を振り返るビデオ映像で、うちの娘を泣かせるくらいのものが作れない筈がない。 とはいえ、隣で見ている父親 -- つまり筆者である -- にとっても、特別な思いはあった。思い返せば小谷野がFAでオリックスにやって来た時、筆者はそれを必ずしも喜んだ訳ではなかった。ベテランのFA選手の加入は、時に、生え抜きの若手から活躍の場を奪う事になり、だから長年一つのチームを応援してきたフ