記者が購入した「日本国紀」単行本初版と上下巻からなる文庫版。下巻の付箋は誤りが放置されていたり、記者が気づいたりした単行本からの修正箇所。「超大幅加筆」をうたうが、天皇の靖国参拝や第二次大戦をめぐる初歩的な事実の誤りはスルーされていた 考え込んでしまった。「日本通史」をうたう作家・百田尚樹さんの文庫版「日本国紀」(11月17日発売)を読んで、である。単行本に対し指摘された数々の誤りが修正されたのは良いとして、なおも基本的かつ重大な誤りが放置されていたからだ。本を作るとは、そういうことなのか。【吉井理記/デジタル報道センター】 お断りしておく。 百田さんの小説はいくつか読んだ。時代小説「影法師」は、多くの名作を残した藤沢周平さんのファンである記者も引き込まれた。 だが、帯書きで「満を持して、待望の文庫化!」とアピールした文庫版「日本国紀」には、あきれかえった。 記者は3年前、単行本初版(20
『天皇の国史』 「はじめに」の全文を掲載します。 日本は天皇の知らす国である。 「日本とは何か」という問いに真摯に向き合うと、自ずとこの答えに辿り着くのではないだろうか。明治時代、大日本帝国憲法を起草する大役を担った天才官僚の井上毅(いのうえ・こわし)は、第一条を書くために、『古事記』『日本書紀』をはじめとする国史に関係する膨大な量の本を読み込んだ。憲法の冒頭に日本の国柄を、つまり「日本とは何か」を簡潔に書くために、日本国史を総ざらい知る必要があった。憲法の条文には長文を用いることはできない。二〇〇〇年以上続く我が国の本質を、たった二、三行で簡潔に書くことは神業といってよい。そして、この難題に立ち向かった井上が絞り出した答えが、次の一文だった。 「日本帝国ハ万世一系ノ天皇ノ治(しら)ス所ナリ」 「しらす」は『古事記』の天孫降臨の神勅にある「知らす」から来ている。現代語では「お知りになる」と
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