〔何必館の最上階にある「光庭」〕 京都の祇園にある何必館(かひつかん)では、素敵な写真展がしばしば開かれる。もともと写真というジャンルに疎いぼくには、はじめて聞く写真家の名前も多い。マルク・リブーも、そのひとりだった。だいたいカメラという機材が芸術の、それ以上にジャーナリズムの必需品になってからというもの、写真家に分類される人種は世の中にあふれるほどいるはずである。 展覧会のポスターでたまたま見かけた一枚の写真が、リブーに対する興味を無性にかき立てた。絵画などとちがって印刷物と現物との印象が天と地ほど異なるということは、こと写真の場合に関しては少ないかもしれない。けれども、是非ともあの何必館の静謐な空間で、壁にかけられたリブーの写真を観たいと思った。膝の上で写真集をめくるのとはまたちがったやり方で、彼の写真と対面してみたくなったのだ。 *** 『ジャン・ローズ』(1967年) 生まれてはじ