昼下がりの穏やかな集団下校の風景は惨状の現場に一変した。東京・練馬で男児3人が切りつけられた事件。男は無表情のまま男児らに襲いかかった。「痛い」「怖い」。恐怖に泣き叫び、逃げ惑う児童ら。男を追い払い、最悪の事態を食い止めたのは、横断歩道のそばで登下校を優しく見守ってくれていたおじいさんだった。 「早く逃げろ!」 横断歩道を渡る1年生の児童十数人に、ボランティアで誘導員を務める広戸勇さん(71)が声を振り絞って叫んだ。 児童の列に、白のTシャツ、口ひげを蓄えた丸刈りの男が、無表情のままにじり寄って来るのが見えた。手ぶらに見えたが、男に襲われた男児の首からは血が流れ出していた。被害男児と同じクラスの男児(7)は、広戸さんの声を聞き、とっさに校舎に向かって逃げ出した。 児童らが広戸さんの横で信号待ちをしていたとき、近くに青色の車が止まり、男が降りてきた。男は横断歩道を渡っていた2人に切り