大塚久雄さんの『社会科学の方法』(岩波新書)というとても面白い本を見つけた。大塚久雄という名前は、学問の世界ではビッグネームだったようだが、今では一般にはあまり知られていない人なのではないだろうか。僕も初めて手にしてみたのだが、内容の面白さと分かりやすさは、かつて三浦つとむさんの本を初めて読んだときのような感じがした。 三浦さんはアカデミックの世界とはまったく無縁の人だったから、その分かり易さはむしろ当然だと思っていたのだが、アカデミックの世界の巨人とも言える人が、これほど分かりやすい文章を書く人だとは意外だった。まだ最初の部分を読んだだけなのだが、そこだけでも「目から鱗が落ちる」というような経験ができることにあふれている。 大塚さんは、冒頭で「科学的認識である以上、それは因果性の範疇の使用ということと、どうしても関連を持たざるを得ない」と書いている。これは、「因果関係」というものを「仮言