アメリカの大統領選挙は中東でも注目の的であった。アラビア語など中東のメディアでも選挙戦中は連日、共和党の現職トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン候補の動向が詳細に報じられていた。もちろん、それは、アメリカの対中東政策の変化が実際に中東諸国に多大な影響を与えると信じられているからである。 アメリカの中東政策は、第2次世界大戦後の、イスラエルと中東石油の供給を守る政策からはじまり、冷戦時代の2本柱政策(水平線の向こう政策)、ペルシア湾岸地域のアメリカ権益を死活的に重要だとするカーター・ドクトリン、湾岸戦争後の、イランとイラクを抑え込む2重封じ込め政策、そして9・11事件後の対テロ戦争というように時代ごとに変遷してきた。アメリカの中東外交では中東情勢の推移で頻繁に敵味方が入れ替わり、域内の勢力図・相関図も戦国時代さながら千変万化してきたのである。 一方、中東諸国も、アメリカにとって中東地域が