香川県出身の川田隆一さん(63)は生まれつきの全盲だ。中2で親元を離れて東京教育大附属盲学校(現在の筑波大附属視覚特別支援学校)に転校し、寮生活を始めた。ただ、夕食の時間が早く、育ち盛りには苦痛だった。寝る前にお腹がすいてしまう。そんな時、同部屋の弱視の生徒は近くの小売店にカップ麺やお菓子を買いに行く。しかし、全く見えない川田さんには怖すぎる。 地元ではどこへ行くのも親と一緒だっただけに、つらさを感じた。それでも腹の虫が鳴くのに耐えられず、ある日、同じ部屋の生徒に道順を聞き、必死の思いで外出。歩いてたった5分ほどの距離をなんとか無事に往復できた時、世界が広がったように感じた。 「空腹のおかげで、一人で歩けた」 視覚障害者にとって外出は事故の危険と隣り合わせで、どうしても引きこもりがちに。1人での散歩など夢のまた夢で、考えたことすらないという。ところが、それが可能になるアプリが開発された。川