駐シンガポール大使 石川浩司 シンガポールという国 人口600万弱、面積は東京23区とほぼ同じ、シンガポール人は自らの国を「赤い小さな点(little red dot)」と呼ぶ。また、彼らは自国が1965年にマレーシアから分離、独立したことについて、「蹴り出された」という。当時は貧しく資源にも恵まれず、吹けば飛ぶような国であった。それが現在は、地域のハブとして機能し、一人あたりGDP7万ドル弱と日本の2倍近い豊かさを享受している。「何が今日のシンガポールの発展を可能としたのか?」というのが2022年10月に大使として着任して以来抱いてきた第1の疑問であった。 そして現時点での私の端的な答えは、「リー・クアンユー(以下「LKY」)という稀代のリーダーに恵まれたこと、そして国家の生存に対する強い危機意識に裏打ちされて、人々がリーダーに従って献身努力したこと」である。「LKY回想録」を読むと、彼