この原稿は東欧セルビアの首都ベオグラードからトルコのイスタンブール経由で帰国する機上で書いている。東欧諸国は外務省時代に縁が薄かった地域。だからこそ退職後は可能な限り現地を訪れるよう努めてきた。東欧でも最近の主要関心はウクライナの南西に位置するバルカン半島、というわけで今回は訪問先のモルドバとセルビアで見聞きした話を書こう。 ウクライナが守る国モルドバとウクライナの間に南北に細長い川沿いの土地がある。国際的に未承認の「独立国」で「沿ドニエストル共和国」とも「トランスニストリア」とも呼ばれる。今回のモルドバ訪問はこの独立国をこの目で見ることだった。その地にはソ連時代からロシア国内に電力供給してきた発電所や大規模な武器弾薬集積地があり、1500人ほどのロシア軍部隊も駐留しているという。当然、モルドバ人の対ロシア観は複雑なのだろう。