「アンメット・メディカル・ニーズ」という言葉がある。いまだ満たされていない医療ニーズ、つまり有効な治療法のない領域のことを指す。製薬業界や医療関係のプレスリリースで、最近よく目にする。 認知症の半数以上を占めるとされるアルツハイマー病もそんな領域の一つだ。国内で推計約79万人。脳内に異常なタンパク質が蓄積して神経細胞が破壊され、脳が萎縮するとみられている。物忘れから始まり、日常生活でできていたことが少しずつできなくなり、やがて寝たきりになり亡くなる。昨年12月、原因物質に作用して進行を遅らせる新薬が保険適用されたが、進行を止めたり、元の状態に戻したりする治療薬はない。 患者数がより少ない疾患も多い。歩行時のふらつきやろれつが回らないなどの症状が徐々に進行する難病「脊髄小脳変性症」の患者数は全国で3万人程度。治療薬はまだない。開発に取り組む研究者は「希少疾患は治験の壁が高く、企業も手を出さな