映画『靖国』と表現の自由/高橋哲哉 日本で‘靖国問題’が再燃している。中国人の李纓(リ・イン)監督が制作した映画『靖国 YASUKUNI』が上映中止に追い込まれた件だ。山東省出身のこの中国人監督は、1989年に日本へ渡った。小泉純一郎首相の参拝で激烈な摩擦が起きる以前の1997年から靖国神社に関心を持ち、10年に渡ってこの作品を撮影したそうだ。この作品は、日本芸術文化振興基金と韓国釜山映画祭アジアドキュメンタリーネットワーク基金を受けて制作された。 「反日映画に公的支援金を支給するのはおかしい」という趣旨の週刊誌報道が事態の発端になった。ある自民党議員が‘支援の妥当性’や‘内容の客観性’を検証するとして、公開前に見せることを要求し、議員を対象とした試写会が開かれた。右翼団体の上映中止を求める圧迫や抗議が相次ぎ、複数の映画館が上映を中止した。一方、右翼の脅迫による上映中止は、表現の自由を脅か