著者の笠原十九司先生から頂戴した『日中戦争全史 上・下』(高文研)読了しました。 上巻のサブタイトルが「対華21カ条要求(1915年)から南京占領(1937年)まで」、下巻が「日中全面戦争からアジア太平洋戦争敗戦まで」となっていることからわかるように、日中戦争の「前史」の起点を対華21カ条要求においたうえで、45年8月までの日中戦争を描き出す試み。 著者が「はじめに」で「類書にない『日中戦争全史』であると自負」する背景には、「これまでの日本における日中戦争の歴史書では、アジア太平洋戦争開始以後の日中戦争の作戦展開がきちんと記述されていないことが多かった」(下巻229ページ)という事情がある。 手元にある一般読者向けの戦争史でこの点を確認しておこう。『日中十五年戦争史』(大杉一雄、中公新書、1996年)はそのタイトルに反して南京攻略戦〜早期和平路線の破綻、すなわち1938年前半までしか扱われ