続・コロナの革命的ワクチンを導いた女性移民研究者 「自分に何ができるのかだけを考え、それにエネルギーを注ぐのです」 船引宏則 ロックフェラー大学教授(細胞生物学) 前回は、ワクチンが働く仕組みと、その開発の難しさを中心に解説した。今回は、新型コロナワクチンがなぜこれほど超短期間で開発できたのか、その「奇跡」に欠かせなかった数々のブレークスルーを起こしたカリコ博士の物語を紹介する。 ハンガリーに生まれ育ち、米国で博士研究員に ケイト・カリコ博士は、1955年にハンガリーで生まれ、ハンガリー南部にあるセゲド大学大学院で博士号を1982年に取得した。指導教官のヤヌー・トーマス(Jeno Tomasz)博士のもとで、非通常型のRNAを合成し、抗ウイルス効果に関連する研究をしていた(ちなみにこのトーマス博士は、筆者が所属するロックフェラー大学のアレキサンダー・トーマス名誉教授の弟さんということだ。世