久しぶりに夕暮れの銀座を歩いたのは東京で遅めの桜が咲きだした4月に入ったばかりのころでした。吉行淳之介さんの生誕100年(1924年4月13日生まれ)に合わせ、特集記事を書くためです。かつてここに作家なじみのバーがあったのを思い出したのです。没後30年も重なるというのに出版界はむろん、世の関心も妙に薄いぞ。ハハーン、こりゃ、きっと「不適切にもほどがある!」とばかりにエロスの大御所を敬遠しておるな、とにらみました。へそ曲がり記者の腕は鳴ります。 迷いました。電話すべきかどうか。そう、わが師、この夕刊特集ワイドをつくった近藤勝重さんに。なにせ大の吉行淳之介ファン、生きていく滋養分にするように読んできたらしいですから。「サンデー毎日」編集長時代、「鈴木くん、吉行さんで新年号を飾りたいんや」。そのひと言で私はアポなしで吉行邸へ。なんとかOKをもらい、これがラストインタビューになりました。ですから、