日本財団の笹川陽平会長1948年に英国から独立して以来70年以上、少数民族武装組織と国軍の内戦が続くミャンマーは2021年2月の国軍によるクーデター以降、民主化を求める市民武装組織も戦闘に加わり、混迷の様相を一段と深めている。 難民救済のモデル筆者は13年以降、ミャンマー国民和解担当日本政府代表を拝命し、和解実現に取り組んできた。しかし民族、文化、時に宗教、言語の違い、さらに周辺国の思惑も複雑に絡み、和平実現の難しさを日々、実感している。
ミャンマー国軍が2月に発表した徴兵制で若者の招集が始まった。国軍は少数民族武装勢力の攻勢に対して劣勢を余儀なくされており、兵力の確保を急いでいる。 ウクライナなどのような国防上の理由からではなく、内戦のための徴兵である。 対象年齢の多くの若者が「自国民に銃を向けたくない」と隣国のタイなどへ国外脱出しており、社会には動揺が広がる。 2021年2月の軍事クーデターの翌月、日米英など12カ国の統合幕僚長や参謀総長らは「プロフェッショナルな軍隊は、自らの国民を害するのではなく保護する責任を有する」とミャンマー国軍に暴力の停止を求める共同声明を出した。 軍政は、国民同士を戦わせる異常な徴兵を、即刻やめるべきである。 徴兵の対象は、18歳以上の男女計1400万人で、当面は男性に限定する。年間約5万人を招集する方針という。 少数民族武装勢力や民主派など反軍勢力との戦闘は長期化し、昨年秋以降、国軍兵士の投
27日、ミャンマー・ネピドーで実施された国軍記念日のパレードで行進する兵士ら(共同)「日本で職を紹介してもらえないか。なんとかして国を抜け出したい」。国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーで3月、産経新聞通信員の取材に応じた会社員男性(29)は心中を吐露した。ミャンマーでは現在、各都市で海外での就労や就学を希望する若者がパスポート申請窓口に殺到している。男性もタイなどへの脱出を希望しており、言葉には国軍支配への絶望感が強くにじんだ。 クーデターが起きた2021年以来、国軍による弾圧に対し、市民には不満と怒りが蓄積されていた。その思いを絶望に変えたのが今年2月に国軍が発表した徴兵制導入だったといえよう。対象は18歳以上の男女で、その数は1300万人以上。自国民に銃を向ける可能性があり、抵抗感は強い。交流サイト(SNS)では「市民が国軍に強制的に連行されている」との情報が広がり、不安に拍車が
日本政府にミャンマーでの政治犯釈放などへの協力を求め要請文を手渡すアウンミャッウィン氏(中央)=1日、大阪市中央区(五十嵐一撮影)【シンガポール=森浩、北京=三塚聖平】ミャンマー国軍がクーデターで全権を掌握して1日で3年が経過した。国軍は1月31日、非常事態宣言の半年間の延長を発表。延長は5回目となった。国軍の強権支配が続く中、少数民族武装勢力が攻勢を強め、国内は政情不安が拡大している。中国の介入も奏功しない中、混乱の収束は見えず、市民の間には絶望が広がる。 市民の国外逃亡「民主派でも国軍でもいい。この生活を何とかしてほしい」。ミャンマー北東部シャン州に住む男性(34)は産経新聞通信員の取材に心中を吐露した。観光業に従事していたが、クーデター以降、収入はほぼゼロ。家族4人を抱え、生活は苦しいという。
ミャンマー国軍がクーデターで全権を掌握して3年が経過した。多くの命が失われ、国土は荒廃した。人々の生活は困窮し、人道危機は深刻化している。人々は「沈黙のスト」などの手段で、あるいは武器を手に抵抗を続けている。 軍事政権に正当性や国民からの支持がないことは明白だ。直ちに弾圧をやめ、民主主義の回復を前提にした対話を始めなければならない。 日本を含む国際社会は、軍事政権への圧力を強め、戦闘などで家を追われた国内避難民らへの人道支援を実現すべきだ。 軍事政権は1月31日、非常事態宣言の半年間の延長を発表した。憲法の規定で、選挙の実施は来年2月に先送りされた。 ミャンマーの人権団体によるとこの3年間、弾圧で4400人以上が死亡した。国連は国内避難民は約260万人に上ると発表した。 一部の民主派勢力は、少数民族の武装勢力と連携して攻勢を強めている。既にミャンマー軍の500以上の拠点を制圧した。ミャンマ
あまりに非道な攻撃に言葉を失う。 軍事クーデターから2年余りが経過したミャンマーで4月、国軍が北部ザガイン地域の民主派勢力の拠点を空爆し、幼い子供も含む約170人が死亡した。 東南アジア諸国連合(ASEAN)からも、非難の声があがった。10日にインドネシアで始まるASEAN首脳会議は、暴力の即時停止を求める議長声明を発表する。 国軍は「テロリストの基地を攻撃した」と正当化したが、幼児を含む民間人を狙う無差別攻撃であり、人道上も認められない。 19日から広島で開催される先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で岸田文雄首相は、ミャンマー問題を主要議題の一つとし、国軍に翻意を促すためにも実効性ある制裁発動へ動くべきだ。 国軍は4月中旬、民主派の施設開所式を狙って、戦闘機で空爆した。その後、攻撃ヘリで機銃掃射し、夜になっても遺体の収容作業を狙って再び空爆した。 2021年2月のクーデター後、国軍に
ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、全権を掌握してから2年が経過した。多くの国民が命や自由を奪われ、国外脱出を迫られた。「アジア最後のフロンティア」と期待された市場も退潮を余儀なくされている。 しかし、国軍の弾圧にもかかわらず、人々は抵抗を続け、一部の民主派は少数民族と連携して武装闘争を展開している。この2年で改めて示されたのは、国軍には正当性も国民からの支持もないという事実だ。日本政府は対話を重視してきたが、米欧と協調し、国軍を孤立に追い込む路線へと舵(かじ)を切るべきである。 この2月はミャンマーにとってひとつの節目だった。軍が全権を掌握する根拠とした非常事態宣言は憲法で最長2年と規定されているからだ。しかし、国軍は1日、治安情勢を理由に、宣言の半年間延長を発表した。これにより、8月までとされた総選挙の実施も遠のいた。もっとも、民主化指導者のアウンサンスーチー氏に計33年に及ぶ刑期を
ミャンマー国軍が同国の民主化の歩みをクーデターで踏みにじってから1日で2年。欧米各国は国軍に対して相次いで経済制裁を発動して圧力をかけるが、中国やロシアが国軍との友好関係を維持し、経済などで連携強化に動く。欧米は国軍を国際的孤立に追い込むことができず、有効な手立てを打てないままだ。 「中国は心の通った隣人であり、包括的な戦略的協力パートナーだ」。国軍トップのミンアウンフライン総司令官は1月21日、最大都市ヤンゴンで行われた旧正月(春節)を祝う行事に参加し、中国を持ち上げた。 中国はクーデター後、一貫して国軍批判を控える。反発した市民がヤンゴンの中国大使館前で抗議デモを行ったことがあるが、昨年7月には王毅国務委員兼外相(当時)がクーデター後初めてミャンマーを訪れ、経済関係強化で合意。国軍支援の姿勢を崩さない。
国軍がクーデターで権力を握ったミャンマー問題は、東南アジア諸国連合(ASEAN)にとって、進展のないまま3年目に入った。 ASEANは事態打開のため、昨年12月下旬にタイ・バンコクで閣僚級会議の開催を試みた。 だが、10カ国中参加したのは半数で、内部の分裂も露(あら)わになった。 ミャンマー国軍を正統政権とみなして同国以外から参加したのは、同じように軍を母体とするタイのプラユット政権、共産党一党支配のベトナムとラオス、フン・セン首相による長期政権が続くカンボジアだけだった。 会議前日には、国連安全保障理事会で、民主化運動指導者、アウンサンスーチー氏らの即時釈放を求める決議案が採択された。米英仏など12カ国が賛成したが、中国とロシア、インドは棄権した。 形式的な決議であるにせよ、全会一致のような形で、クーデターによる権力奪取は認めないとの強い意志表示ができなかったのは残念だ。 ASEANは、
ミャンマーの首都ネピドーで国軍記念日の式典会場に入るミンアウンフライン総司令官を乗せた車両=3月27日(共同)【シンガポール=森浩】クーデターで実権を握ったミャンマー国軍がロシアと急速に接近している。原子力発電技術に関する協力で合意し、国軍はロシアの決済システム導入も検討している。軍事クーデターを起こした国軍とウクライナ侵略を続けるロシアに対しては欧米諸国が相次いで経済制裁を発動。ともに国際的孤立が深まる中、関係の緊密化が進んでいる形だ。 「ロシアは数少ない友好国の一つであると感じている」。国軍トップのミンアウンフライン総司令官は9月、ロシア・ウラジオストクでプーチン大統領と会談した際、こう述べてロシアへの親近感を隠さなかった。ミンアウンフライン総司令官の訪露は昨年2月のクーデター以降、3回目。プーチン氏を「世界の指導者」と手放しで称賛した。 ロシア側もラブロフ外相が8月にミャンマーを訪れ
東南アジア諸国連合(ASEAN)が11月にカンボジアで、対面では3年ぶりとなる首脳会議や域外国も交えた関連会合を相次ぎ開催したが、焦点であるミャンマーの事態打開で成果を示すことはできなかった。 ASEANは、クーデターで権力を掌握した国軍に、暴力行為の停止や対話の開始など5項目の履行を求めている。首脳会議の議長声明は「(国軍が)履行の意思を欠き、深く失望した」とも指摘した。 当事者である国軍のやる気がないとは深刻な事態である。放置すればミャンマーの国際的な孤立は深まる。国内で抗議を封じ込められて不満を募らせる民主派と、国軍との衝突の危険も高まろう。 問題解決へのアプローチを見直すべきである。ASEANは主だった会合への国軍関係者の出席を認めていないが、より強いペナルティーを科す行動が必要だ。 ASEANの議長国は来年、カンボジアからインドネシアに引き継がれる。地域大国、民主主義国家として、
物価高騰に悩むミャンマー国軍は中国との国境貿易再開に望みを託す。ゲートの向こうが中国側=2019年12月、ミャンマー東北部シャン州ムセ国軍とアウンサンスーチー派による事実上の内戦が続くミャンマーで、国民生活に関わるさまざまな物資の価格が高騰し、総人口の4割が貧困層に陥るという危機的状況が続いている。コメの生産も大幅に減少し、外貨獲得も難しい情勢だ。唯一の頼みは中国とロシアだが、ともに協力は限定的だ。 毎日の食生活に欠かせない食用油(パーム油)の小売価格について、昨年2月の軍事クーデター以降、政権を支配する国家治安評議会は10月31日からの販売基準価格を1ビス(約1600グラム)当たり4225チャット(現在の為替レートで約280円)と制定。しかし、最大都市ヤンゴン市内の商店主らによると、実勢価格は9500~10000チャットと2倍を超えているという。食用油は多くを輸入に頼っており、世界的な物
東南アジア諸国連合(ASEAN)は今月初めのカンボジアでの外相会議で、国軍のクーデターから1年半になるミャンマー情勢を協議し、政治犯4人の死刑執行などに懸念が示された。 共同声明では、ASEANが昨年4月の特別首脳会議で合意した、暴力行為の停止や平和的解決に向けた対話の開始など5項目について、国軍が十分履行していないと「深い失望」を表明した。 内政不干渉を標榜(ひょうぼう)するASEANにとって、加盟国への名指しの批判は異例である。国軍による民主派弾圧を座視しないとの決意を示したと受け止めたい。 会議では、すべてのASEANの閣僚級会合から国軍を締め出す案も議論になった。重要なのは、加盟国が一丸となって国軍に強い圧力をかけることである。11月の首脳会議開催時など、期限を設けて5項目履行を迫るべきだ。 国軍関係者が招かれなかったミャンマーは、5項目履行への評価を「一方的」と批判し、声明に盛り
クーデターで全権を握ったミャンマー国軍の報道官は17日の記者会見で、最大都市ヤンゴンで治安当局に拘束され収監されているドキュメンタリー制作者、久保田徹さんについて、電子取引法違反容疑での訴追も検討していると明らかにした。関係者によると、次回の審理は8月30日。日本政府は早期解放を求めている。 久保田さんはこれまでに扇動と入国管理法違反の疑いで訴追されている。関係者によると、16日に収監先の刑務所内に設置された裁判所で審理が行われた。ゾーミントゥン報道官は17日の会見で「入国管理法違反については審理が始まっており、残り2件は準備を進めている」と述べた。
ミャンマー国軍が、民主活動家ら4人の死刑を執行した。クーデターで権力を奪った国軍に抵抗し、民主化要求を貫いた元下院議員らである。 国軍が設置した軍事法廷が今年1月、「テロ行為」に関与したとして死刑判決を言い渡した。弁明、弁護の機会が与えられたかどうか極めて疑わしく、実態は、有無を言わさぬ政治犯の処刑である。 内外から死刑を執行しないよう求める声が相次いでいたが、国軍は強行した。ミャンマーではこの数十年、死刑執行はなかった。 人権団体などによると、ミャンマーではクーデター以降、子供2人を含む117人に死刑が宣告された。4人の刑執行は、国民に対する恫喝(どうかつ)に他ならない。 弾圧が苛烈になってきたとみるべきだ。日本をはじめ国際社会は連携し、権力奪取をやめさせるため、圧力を強化すべきである。 クーデターから1年半が経過し、事態は悪化している。国軍は平和な抗議デモに実弾で応じ、民主派勢力の一部
世界はロシアのウクライナ侵略に目を奪われているが、ミャンマー問題を忘れてはならない。 クーデターを起こした国軍が支配するミャンマーは、正常化への動きが少しも見られず、強権統治の既成事実化が進んでいる。 民主派勢力の一部は武装闘争に舵(かじ)を切り、加勢する少数民族武装勢力も含め、国軍との戦闘が激化している。 外資の引き揚げや通貨下落、ロシアのウクライナ侵略に伴う世界的な物価高で、ミャンマー経済は極度に悪化した。放置するわけにはいかない。 事態の打開には、全当事者による対話が必要だ。とりわけ、国民民主連盟(NLD)主体の民主政権の指導者で、今は国軍に拘束されているアウンサンスーチー氏の参加が欠かせない。 国軍は昨年2月のクーデターで実権を握り、街頭での平和的な抗議デモに対して、無差別の銃撃を含む徹底的な弾圧で応じた。 民主派勢力の一部と少数民族武装勢力の関係者は「国民統一政府」(NUG)を結
米国務省が、昨年の世界約200カ国・地域の人権状況をまとめた報告書を発表した。 報告書は、人権や民主主義が脅かされている国・地域としてロシア、ベラルーシ、中国、香港、北朝鮮、ミャンマー、シリア、スーダンなどを挙げた。 政治家や人権活動家、ジャーナリストらが不当に投獄、拷問、殺害されているなどと非難した。 人権問題に国境はない。弾圧に苦しむ人々を救うためには、まず世界が問題の存在を知る必要がある。報告書の意義は大きい。 ロシアは今年2月にウクライナへ大規模侵攻したが、それ以前から、ウクライナ東部で親露派武装勢力の訓練などを続けていたと報告書は指摘した。2014年のクリミア併合が、「人権状況に重大な悪影響を及ぼし続けている」とも記した。 忘れてならないのは、中国における深刻な人権侵害である。ウイグル人などへの弾圧をやめさせなければならない。 報告書は中国について、「新疆ウイグル自治区におけるジ
27日、ミャンマーの首都ネピドーで国軍記念日の式典会場に入るミンアウンフライン総司令官を乗せた車両(共同) ミャンマーの首都ネピドーで27日「国軍記念日」の式典が開かれ、大規模な軍事パレードが実施された。昨年2月に国軍がクーデターで全権を掌握してから2度目の記念日。ミンアウンフライン総司令官は演説で「テロリストと交渉する考えは全くない」と強調し、地方を中心にゲリラ戦を仕掛ける民主派武装勢力を壊滅させる方針を示した。 式典には一部の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に加え、ロシアや中国など計8カ国の駐在武官が出席した。日本や欧米各国は欠席した。国軍への武器供与を続け緊密な関係にあるロシアは当初、本国から国防省幹部を派遣する予定だったが「多忙」を理由に見送った。ウクライナ侵攻の影響とみられる。 総司令官は演説で、「外国の侵略者と利己的な政党が国軍を分裂させようとしている」と指摘。名指しは避
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