辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 まずは問題から。 A 「そっけない」「あじけない」「いくじない」「かぎりない」 B 「あどけない」「せわしない」「せつない」「はしたない」 AとBに掲げた語はすべて末尾に「ない」が付く形容詞だが、Aの語例の「ない」とBの語例の「ない」は別のものである。その違いを答えなさい。 このような問題が学校のテストで出題されることはまずないであろうが、答えは、Aの「ない」は名詞に付いて否定の意を含む形容詞をつくる語であり、Bの「ない」は性質・状態を表す語(多く、形容詞語幹・形容動詞語幹など)に付いてその意味を強調し、形容詞をつくる接尾語である。 つまり、Aはすべて名詞+「無い」で形容詞となった語ということになる。 「そっけない」の「そっけ」はおもしろみやあいその意味、「