私は、日本の農林水産省からの出向により当館において農務官(agriculture attaché ) として勤務しています。ロンドンに所在する各国の在外公館には、日本のほかにも、米国、カナダ、EU諸国ほか多くの国から農務官が派遣されています。 なぜ商工業やサービス産業の先進国である英国にそんなに多くの農務官が勤務しているのか疑問に思われるかもしれません。 その理由の一つは、英国・ロンドンが昔から貿易と商業の中心として栄えてきた歴史を背景として、当地には、穀物、砂糖、コーヒーなどの一次産品に関する国際機関がおかれているということがあげられます。 もう一つの理由は、英国が「農業」の先進国として重要な位置付けにあるということです。多くの外国人にとって、英国と聞いて真っ先に思いつくイメージは、自由貿易を推進し、経済的活況に沸く国、あるいはミュージカルや演劇に代表されるような一流の芸術と文化の国とい