人の営みとして朝起きてトイレに行き、一日が始まる。だが、そこに行列ができ、順番が巡るまで我慢が必要となると――。体の不調や心のストレスにつながるのは想像にたやすい。能登半島地震の被災地の避難所でトイレ事情が課題となっている。過去の災害被災地でも指摘されながら、十分に省みられてこなかった一つだろう。 阪神大震災の死者6434人のうち、震災関連死は900人以上にのぼる。心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞で亡くなっているケースもみられ、快適なトイレ環境がなかった影響が一因と言われる。避難所などで水洗が機能しなくなると災害直後のトイレは排せつ物であふれて衛生状態が悪化する。気持ちよく「用が足せない」と行くのがおっくうになる。次に排尿排便の回数を減らそうと十分に水分や食事を取らなくなり、運動も減る。結果、血行不良が起こり、血の塊が肺の血管に詰ま…