中東のカタールに来て3年目に入りました。初めての外国,それも馴染みのないアラブの国での仕事です。外国で和食を供することは日本でとは全く別物だと聞いてはいたのですが,実際に来てみると戸惑うことばかりでした。辻調理師学校で和食を学び,大阪で10年修業したという自信もなくしてしまいそうな時期もありました。 3年目の今,創意工夫こそが公邸料理人にとって一番肝心なことだと思っています。アラブで豚肉を出せないことは知っていましたが,人々がよく火の通った料理しか食べないことは誰も教えてくれませんでした。新鮮な魚も上等の肉も完全に火を通すのですから,日本のレシピーどおりではうまくいきません。かと言って洋食かというとそこは譲りたくない。学んだ技術を活かして,この地で手に入る食材で,アラブ人も喜ぶ和の料理を作り出すこと,これが苦労するところであり,また面白いところです。 試作段階で没になった料理も多くあります