人の行動の原動力は何でしょうか。お金や地位へのこだわりでしょうか。それとも、自分の可能性の実現でしょうか。こうした動機づけの源泉について、長年議論が重ねられています。 その中でも広く知られているのは、マズローによる「欲求階層説」でしょう。マズローは人の欲求を5つに分類し、下位の欲求が満たされると上位の欲求が生じるという階層性を主張しました。 欲求階層説は一見、人の行動をうまく説明しているように思えます。しかし、この理論には様々な批判が存在します。 本コラムでは、欲求階層説への批判を紐解いていきます。それらの検討を通じて、人事領域の皆さんに示唆を提供したいと思います。 欲求階層説とは 欲求階層説は人の動機づけを5つの階層に分類した理論であり、マズローによって1943年に提唱されました。具体的には、人の欲求は、生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、尊重の欲求、自己実現の欲求という5つに分けられま