長年、日本経済の「強み」とされてきた中小零細企業。しかし、実際にはそれらがこの国の生産性を下げ、日本経済低迷の足かせとなっていたのだとしたら──。 日本経済再生の「真の処方箋」を説く、デービッド・アトキンソン氏の最新刊『国運の分岐点』から、その一部を特別公開する。 抵抗を甘く見ていた 前著『日本人の勝算』で、私は「中小企業」の問題を甘く見ていました。 1964年以降、日本では1社あたりの社員数が大きく減少して、それが日本経済の生産性向上に悪影響を及ぼしていることは明らかなので、これを解決するには、企業の規模を拡大していくべきだ──という結論に至って、そこから先のことは考えていませんでした。 客観的、論理的に考えれば、この結論が揺らぐことはありません。解決の道筋が見えているのですから、あとはただそれを「実行」に移せばいい。そう考えていたのです。 しかし、それはかなり楽観的な考えでした。 企業