山岸 敬和(やまぎし・たかかず)氏 1972年、福井県生まれ。95年、慶応大学法学部卒。2007年、米ジョンズ・ホプキンス大学政治学部博士課程修了。南山大学准教授などを経て2015年から現職。主な著書に『アメリカ医療制度の政治史』(名古屋大学出版会)など。 トランプ新大統領は、就任から100日の間に立法化する100日プランの主要項目にオバマケア廃止を掲げています。すぐに廃止する必要のあるものだったのでしょうか。 山岸:まず、オバマケアとは何かから振り返りましょう。これは2010年にオバマ大統領(当時、以下全て)の元で発効した医療保険制度改革法のことです。かつて約4800万人にも上る無保険者がいた米国に「国民皆保険制度」を導入しようという狙いでした。 米国は、国民皆保険ではなく、公的な保険は、65歳以上の人や障害者向けのメディケアと、低所得者向けのメディケイドだけでした。多くの国民は、民間の