厳しい試練を乗り越え、断固、やり抜く――。日立製作所が、こんな「ザ・ラストマン(最終決断者)」の育成に力を入れています。経営を担う幹部候補にあえて困難な課題を与え、商機を切り開く経験と実績を求めています。リーマン・ショックの後、国内の製造業で過去最悪という赤字を経験した日立の首脳らは、会社のかじ取りを誤らない経営のプロを育てていく大切さを痛感しています。 決断下す「ラストマン」たれ 今のままでは負け続けてしまう。期待を受けたのに英国での仕事はとれないかもしれない――。2014年の夏。日立製作所の冨田浩史さん(47)は焦りを募らせていた。英国の鉄道会社ネットワークレール社が、首都ロンドンの中心を南北に縦断する基幹路線「テムズリンク」の運行管理システムの委託業者を決める入札が迫っていた。 レール社は自動化が遅れていた旧来の運行管理を見直し、国を挙げてシステムの更新を計画。世界の約60社が参画に