学術情報流通と大学図書館の学術情報サービス 本稿の目的は,学術情報の流通・蓄積・発信に関する国内の研究文献をレビューし,大学図書館の学術情報サービスの現状と動向を把握することにある。取り上げる文献は最近3 年程度に発表された論考を中心とする。筆者が大学図書館に勤務することから,大学図書館の現場や実務に関連したケーススタディを中心に取り上げることになる。 1. 学術情報流通のメインストリーム:電子ジャーナル 1-1. 研究者の情報行動の変化と図書館の対応 この10 年程の間に,論文を中心とする学術情報の流通のメインストリームは完全にインターネットを介したデジタル情報となった。その背景には,研究者の行動様式の変化がある。先行研究を探す段階から,論文を執筆する過程,研究成果を発表するところまで大半の情報はデジタルで作成され流通する,そのような研究のサイクルが多くの研究分野で一般的となっている。