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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (18)

  • 近未来における技術開発の役割と、潜在的な影響の探究を描き出すSF傑作選──『シリコンバレーのドローン海賊』 - 基本読書

    シリコンバレーのドローン海賊 人新世SF傑作選 (創元SF文庫) 作者:メグ・エリソン,テイド・トンプソン,ダリル・グレゴリイ,グレッグ・イーガン,サラ・ゲイリー,ジャスティナ・ロブソン,陳楸帆,マルカ・オールダー,サード・Z・フセイン,ジェイムズ・ブラッドレー東京創元社Amazonこの『シリコンバレーのドローン海賊: 人新世SF傑作選』は、『近未来、そしてそれほど近くはない未来における技術開発の役割と、潜在的な影響の探究を使命としている』SFアンソロジーシリーズの一冊になる。たとえば表題作は「配達用のドローンを狩る」人々を中心にした、近未来にありえそうな情景の物語だ。 サブタイトルにある「人新世」とは何かといえば、人類はその経済活動によってあまりに地球の気候を変えてしまっており、その兆候はすでに地質にも現れるようになっている──として提唱されている「新しい地質年代」、すなわち現代のことだ

    近未来における技術開発の役割と、潜在的な影響の探究を描き出すSF傑作選──『シリコンバレーのドローン海賊』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2024/05/11
    “「銃乱射や気候変動の被害者やその家族は実際に存在するものではなく、クライシス・アクター、つまり役者が演じているものでこうした事件は実際に起きたものではない、という主張” ふえ~
  • 原作《三体》三部作にたいする大胆な再構成を試み、芯を同じくした別物として生まれ変わったNetflix版──『三体』 - 基本読書

    www.netflix.com 世界累計2900万部、日中国SFブームを引き起こすきっかけになった劉慈欣による壮大なSF長篇《三体》三部作。そのNetflixドラマ版が先日公開された。エピソード数は全部で8話で、原作(第二部、第三部は上下巻)の分量のことを思えば8話でその物語が全部語り尽くせるわけもないから、ドラマ版は原作の途中までになる。 で、SF超大作ドラマだし原作も好きだしですぐに観てみたのだけど、これが大変おもしろかった。原作とは大きく変わっている部分も多いが芯はブレずに残っていて、たしかに『三体』を観たという感触が強く残る。たとえば、原作では冒頭に配置され、作中の重要な人物が人類に絶望するきっかけを与える中国の文革のシーンも、Netflix版の前に公開済みのテンセント版とは違ってきっちりと冒頭で描かれている。 物語の大まかな流れは基的に同一だし、ガジェットや重要な出来事もそ

    原作《三体》三部作にたいする大胆な再構成を試み、芯を同じくした別物として生まれ変わったNetflix版──『三体』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2024/03/30
    あのVRヘッドセットのデザインは絶対〈水滴〉の伏線だよなあと思うので、めっちゃ続きが見たくなるわよ
  • 時間から猫テーマまで中華SFの粋が集められた、今年ベスト級のSFアンソロジー──『宇宙の果ての本屋』 - 基本読書

    宇宙の果ての屋 現代中華SF傑作選 作者:顧適,何夕,韓松,宝樹,陸秋槎,陳楸帆,王晋康,王侃瑜,程婧波,梁清散,万象峰年,譚楷,趙海虹,昼温,江波新紀元社Amazonこの『宇宙の果ての屋』は、日における中華SF翻訳・紹介の立役者立原透耶編集による中華SF傑作選になる。2020年にも同じ新紀元社から『時のきざはし』という中華SF傑作選が出ていて、書はその続篇というか第二巻にあたる。 『時のきざはし』のレベルは高く、今なお中国の才能を知るためのSFアンソロジーとしてはトップクラスにおすすめしたいしたい傑作だが(文庫化してないから値段的にはあれだけど)、作品全体のレベルでいえば『宇宙の果ての屋』に軍配があがる。それぐらい全15篇すべてのレベルが高く、時間やなど様々なテーマ・題材がある中で、どれもが一生記憶に残るような鮮烈な印象を遺してくれる一冊だ。 huyukiitoichi.ha

    時間から猫テーマまで中華SFの粋が集められた、今年ベスト級のSFアンソロジー──『宇宙の果ての本屋』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2023/12/19
    元書店員としてはタイトルだけで泣いちゃう/『仏性』中国版アシモフって感じなのかな?
  • 物理術師から幻術師まで、大きく異る方向の天才魔法使いが6人集められ、最終的に排除する1人を決める、ファンタジー×SF長篇──『アトラス6』 - 基本読書

    アトラス6 上 (ハヤカワ文庫FT) 作者:オリヴィー ブレイク早川書房Amazonこの『アトラス6』は著者オリヴィー・ブレイクがロースクール在学中にセルフパブリッシングで刊行したのち、爆発的に人気が出てAmazonPrimeでのドラマ化も決定している話題のファンタジー長篇だ。記事名にも入れたが、他者の行動に関与するエンパスに他者の思考を読み取るテレパス、世界の物理的事象に干渉する物理術師など様々な「特殊な力」を行使する、凄腕魔法使いたちの物語となる。 世界中の貴重な蔵書を守護する秘密の組織〈アレクサンドリアン協会〉、そこでは10年に1度、6人の在野の魔法使いらが選出され、うち5人だけが入会を果たし、富や名声、協会しか持っていない資料へのアクセスが許される──。と、魅力的な冒頭のあらすじに加えて表紙イラスト&装丁が最高だったので期待して読み始めたのだけど、中身はその上がりきったハードルにち

    物理術師から幻術師まで、大きく異る方向の天才魔法使いが6人集められ、最終的に排除する1人を決める、ファンタジー×SF長篇──『アトラス6』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2023/03/27
    “レイナの祖母は彼女の誕生を奇跡と呼び、レイナが初めて息をしたとき、世界はそれに応えて安堵のため息をつき、彼女に与えられた命の恵みにすがりついたのだといっていた” この引用部分だけで間違いないって感じ
  • 魔術的闘争と共にアメリカの黒人差別の歴史を描き出す、ドラマ原作にもなったホラー連作短篇集──『ラヴクラフト・カントリー』 - 基本読書

    ラヴクラフト・カントリー (創元推理文庫) 作者:マット・ラフ東京創元社Amazonこの『ラヴクラフト・カントリー』はファンタジーや幻想系の作品で知られるマット・ラフによるホラー・幻想の連作短篇集となる。まだ黒人差別が色濃く残る1950年代を舞台に、黒人中心の登場人物らが次々と差別と魔術的騒動に直面する様を、連作短篇形式の長篇で、時に情緒的に、時にコミカルに描き出していく。 作は書名にも「ラヴクラフト」と入っているように、明確にクトゥルー神話の産みの親、H・P・ラヴクラフトとその著作が関係してくるが、それは(文庫解説にもあるように)シンプルにリスペクトだけがこめられているわけではない。ラヴクラフトには人種差別的な傾向が存在することが指摘されており、そうである以上作(『ラヴクラフト・カントリー』)でも無批判に取り上げられていくわけではないのだ。 「黒人差別の歴史を描き出している〜」などと

    魔術的闘争と共にアメリカの黒人差別の歴史を描き出す、ドラマ原作にもなったホラー連作短篇集──『ラヴクラフト・カントリー』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2023/03/23
    ちょうどHBOのTVシリーズを見終わったところ。むっちゃハイコンテクストなドラマでした。
  • ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』 - 基本読書

    平和という名の廃墟 上 帝国という名の記憶 (ハヤカワ文庫SF) 作者:アーカディ マーティーン早川書房Amazonこの『平和という名の廃墟』は、前作『帝国という名の記憶』で長篇デビュー作ながらもヒューゴー賞を受賞したアーカディ・マーティンの第二作にして二部作の後篇となる。前作は書名に「帝国」と入っているように、宇宙をまたにかける銀河帝国と、その宮廷で繰り広げられる皇帝の跡継ぎ問題なども関わってくる陰謀劇を中心に描き出す、いわばスペース・ポリティカル・サスペンスとでもいう作品であった。 著者は大学でビザンツ帝国史の博士号を取得し、別の大学で都市計画の修士をとるなど専門的背景のある人物だが、まさにそうした専門性や知識を活かして、前作では宇宙帝国とその在り様を生き生きと、美しく描き出していた。宇宙帝国ならではの特殊な文化・概念の書き込み、帝国とそれが実質的に植民地支配した周辺諸国との微妙な力関

    ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2022/10/19
    もうタイトルだけで痺れる。カッコよすぎ。
  • 宇宙飛行士の著者による、アポロ18号を主軸に据えあり得たかもしれない宇宙開発の歴史を描く宇宙SF──『アポロ18号の殺人』 - 基本読書

    アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:クリス ハドフィールド早川書房Amazonこの『アポロ18号の殺人』は、アポロ17号でアポロ計画が終わり、その後宇宙開発が停滞に入ってしまった現代とは異なり、アポロ計画が18号まで持続し、さらに米ソの戦いが宇宙、月でも繰り広げられるようになった「架空の宇宙開発史」を描きだす宇宙SF長編である。近年、長らく停滞していた宇宙開発がコストダウンや民間企業の参入が重なってにわかに盛り上がってきているが、それに呼応するように宇宙SFのヒット作も(たとえば『宇宙へ』『火星へ』など)出始めてきている。 作もいわばそうした流れに連なる宇宙開発ものの作品なわけではあるけれども、他作品と異なる作ならではの特徴は、著者クリス・ハドフィールドが、カナダ出身の引退した宇宙飛行士であるという点だ。しかも、カナダ人としてはじめて宇宙空間で船外活動を行い、2回のスペ

    宇宙飛行士の著者による、アポロ18号を主軸に据えあり得たかもしれない宇宙開発の歴史を描く宇宙SF──『アポロ18号の殺人』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2022/08/16
    『フォー・オール・マンカインド』っぽい
  • 1400ページ超えの凄まじい物量で展開するパンデミック終末巨篇──『疫神記』 - 基本読書

    疫神記 合版 (竹書房文庫) 作者:チャック・ウェンディグ竹書房Amazonこの『疫神記』は「ワシントン・ポスト」紙の年間ベストにも選出された、パンデミックSFの超大作長篇である。そのページ数は原著約800ページ、この邦訳版は1400ページを超え、並大抵の厚さではない。僕はKindleの合版で読んだので物理的な厚さこそ感じなかったものの、ページをめくれどもめくれども右下の「%」がミリも動かないのをみて「なんじゃあこりゃあ!!」とビビったものだ。それぐらい厚い。 新型コロナウイルスが猛威を奮い始めてから、2019年頃に書かれた感染症を扱ったSFが「予言的な書!!」といって多数翻訳されてきたが、作もその流れに連なる一冊で刊行は19年の7月のこと。作では、現代を舞台に、巨大な彗星が空を通過したあとに一部の人々が呼びかけにも反応せず、夢遊病的に外に出てどこかを目指し始めるという奇怪な状況か

    1400ページ超えの凄まじい物量で展開するパンデミック終末巨篇──『疫神記』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2022/06/03
    うわものすげえ面白そう!/先生「観戦」「今期」ていうタイポが
  • 第一次世界大戦中にインターネットや携帯電話が発展し、高度な監視システムが構築されたIFのドイツを描き出す改変歴史SF──『NSA』 - 基本読書

    NSA 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:アンドレアス エシュバッハ早川書房Amazonこの『NSA』は、ドイツを代表するSF作家アンドレアス・エシュバッハが18年に発表した、ドイツが舞台の歴史改変SF小説である。歴史改変ものとは、「もし歴史のあの時点で結果がこうなっていたら?」といった実際の歴史と異なる仮定をおき、別の歴史を空想するジャンルのことだが、その舞台とされる歴史の分岐点にも人気の多寡がある。もっとも書かれてきたのは、おそらく第二次世界大戦時の話だろう。 たとえば、第二次世界大戦でもし大日帝国、ドイツ、イタリアの枢軸国側が勝利したら……? は『高い城の男』や『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』など多くのSF作品で描き出されてきた。で、『NSA』も改変歴史SFで、大人気の第二次世界大戦期のドイツが舞台なのだが、題材的には先行作と比べても変わり種だ*1。 『NSA』が描き出して

    第一次世界大戦中にインターネットや携帯電話が発展し、高度な監視システムが構築されたIFのドイツを描き出す改変歴史SF──『NSA』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2022/01/15
    “『特に気になったのは、プログラミングは女の仕事だとみなされていること、しかも男に巡りあえなかった女を想定していることだ” 面白いな
  • この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書

    サハリン島 作者:エドゥアルド・ヴェルキン発売日: 2020/12/22メディア: 単行このエドゥアルド・ヴェルキン『サハリン島』は、ロシアのメディアで、この10年で最高のロシアSFと評されているSF長篇である。「この10年で最高」というのは、気軽に使うにはリスキィな褒め言葉だ。何しろ、これでつまらなかったら他のこの期間に発表されたロシアSFはいったいなんなんだ、という話になってしまう。 なので、話半分というか……、勢い余って言い過ぎちゃった人がどっかのメディアにいたのかな? ぐらいの心持ちで読み始めてみたのだけれども、いやはや……。これはたしかに、この10年で最高のロシアSFかどうかはわからないがめちゃくちゃおもしろい! 表面的な題材だけ抜き出してみれば、ゾンビ的な感染症に第三次世界大戦による終末世界化、変容してしまった世界を二人の男女が旅をするという、ありきたりなポストアポカリプス物

    この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2020/12/31
    “日本だけはMOBが蔓延する前から鎖国政策をとり…他国の船(主にロシア)を燃やし…〈維新〉を宣言し、日本は自らを〈帝国〉と…中国人とコリアンの狂乱を鎮圧” あっちではこういう設定にリアリティがあるのかしら
  • キャメロンがスピルバーグ、ノーラン、リドリー・スコットらに聞く!──『SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』 - 基本読書

    SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座 作者:ジェームズ・キャメロン発売日: 2020/09/30メディア: Kindle版この『SF映画術』は、『ターミネーター』や『アバター』など数々のSF映画をとってきたジェームズ・キャメロンが、「なぜ、今SFが重要なのか」と、現代、過去にSF映画を撮ってきた巨匠たちに問いかけるSF映画インタビューである。 SF創作講座とか、映画術とか、なんか「これを読めばSF映画の撮り方がわかる」みたいな書名になっているが、基的にはキャメロンが巨匠らにどんな映画小説に影響を受けてきたのか、また巨匠らがどのような思惑でこれまでのSF映画をとってきたのかを掘り下げ行く内容で、特に「術」とか「方法論」っぽいものがメインで語られているわけではない。まあ、参考にならないということもないのだろうけど。 しかし、取り上げられて

    キャメロンがスピルバーグ、ノーラン、リドリー・スコットらに聞く!──『SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2020/10/24
    アマゾンみたら「巻末にはアーノルド・シュワルツェネッガーとの対談も特別収録」わはは
  • あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』 - 基本読書

    宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『宇宙(そら)へ』は、メアリ・ロビネット・コワルによる、1950年代の女性の計算者&パイロットの物語を描き出す、宇宙開発系のSFである。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞というアメリカの主要SF関連賞を総なめにした、SFにおける今年最大の話題作のひとつ。僕はそもそも、SFとしては現実的な科学に根ざして宇宙を舞台に展開する物語、宇宙開発系と言われるサブジャンル全般が特に好きだから、作にも大いに期待していたんだけど──いやーこれはおもしろかった! 主な舞台となっているのは先に書いたように1950年代のアメリカだが、この世界は我々の

    あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2020/08/21
    女性宇宙飛行士って「フォー・オール・マンカインド」にも出てきたなー(ありえたかもしれない宇宙開発史もだ)
  • テクノスリラーの傑作『アンドロメダ病原体』の正統続篇にして、ド直球のSFとして拡張してみせた快作──『アンドロメダ病原体-変異-』 - 基本読書

    アンドロメダ病原体-変異- 上 作者:マイクル クライトン,ダニエル H ウィルソン発売日: 2020/05/26メディア: Kindle版テクノスリラー&SFの傑作マイケル・クライトンの出世作『アンドロメダ病原体』の、別の著者による正統的な続篇がこの『アンドロメダ病原体-変異-』である。 『アンドロメダ病原体』は架空の病原体をめぐる5日間の騒動を描いた小説である。通常の語りとは異なり事態の進行を客観的に記録した報告書のような体裁で、写真や図など具体的な資料が随所に挟み込まれている、特殊なスタイルの小説であった。この『変異』も、そうした小説上のスタイルをきちんと受け継いでいる。 とはいえ、元はマイケル・クライトンの出世作になったことからもわかる通り、科学面でのノンフィクション的な語りなど、氏のスタイルが色濃く出ている作品で、続篇とはいっても難しい面もあるんじゃないかなあ……昔あったコンテン

    テクノスリラーの傑作『アンドロメダ病原体』の正統続篇にして、ド直球のSFとして拡張してみせた快作──『アンドロメダ病原体-変異-』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2020/05/29
    うおお、かっけえ 『たったいま、〈永遠の不寝番〉計画は所定の目的を果たした。この部屋におけるわれわれの仕事は完了だ。今後、どのような職務に任じられるのであれ、諸君の健闘を祈っている。』
  • 偶然によって彩られた混沌(幻想/SF/刑事/ロード/能力者バトル/登山……etc)小説──『偶然の聖地』 - 基本読書

    偶然の聖地 作者: 宮内悠介出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/04/25メディア: 単行この商品を含むブログを見る宮内悠介さんが雑誌『IN POCKET』にて数年に渡って連載していた長篇小説である。怜威という令和の時代にふさわしい名前の人物が、遠い血縁関係にあるニルファムという女性とコンタクトをとるため、イシュクトなる地図にも載っていないし座標もわからないし眉唾な伝説ばかりが残る謎の山へと向かうことになる──という開幕の一種のロードノベルであるともいえるが、その実態は、旅に私小説的な面とSFとメタ・フィクションが合わさった、「偶然の小説」とでもいうようなものである。 いくつか変なところがある いくつか変なところのある小説だが、ぱっと読み始めて変なのは大量に挟まれる小説への注である。一般的にあまりnot翻訳小説に注はつかないし、通常読んでいてはわからないものに補足説明がついてい

    偶然によって彩られた混沌(幻想/SF/刑事/ロード/能力者バトル/登山……etc)小説──『偶然の聖地』 - 基本読書
  • みすぼらしい探偵に落ちぶれたアドルフ・ヒトラーを描く、歴史改変奇譚──『黒き微睡みの囚人』 - 基本読書

    黒き微睡みの囚人 (竹書房文庫) 作者: ラヴィ・ティドハー出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/01/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見るヒーロー物の要素と第二次世界大戦以後の戦争を統合して描いた、ギーク&ポリティカルとでもいうような『完璧な夏の日』などの著者ラヴィ・ティドハー最新邦訳は、ヒトラーが失脚し、ロンドンに移り住んで探偵になった日々を描く改変歴史奇想譚だ。栄光の座を追われ、理想の追求も不可能となり、心の底から嫌悪するユダヤ人たちからも仕事を受けねばならなくなったみじめな彼の姿は、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に収容されている一人の作家が、生と死の境目で夢見た〝時間と場所を隔てた別世界〟のもので──と、なかなかに複雑な構造をとっている。 そうした、想像することで最悪の日々を耐え抜いている作家のアウシュビッツでの地獄のような日々(ヒトラーの探偵譚とは、交互

    みすぼらしい探偵に落ちぶれたアドルフ・ヒトラーを描く、歴史改変奇譚──『黒き微睡みの囚人』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2019/02/09
    すげえ…
  • SF映画の新たな時代を切り開いた傑作の裏側を描くドキュメンタリー本──『2001:キューブリック、クラーク』 - 基本読書

    2001:キューブリック、クラーク 作者: マイケル・ベンソン,添野知生,中村融,内田昌之,小野田和子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/12/27メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る年越しのタイミングで、毎年特に何かしているわけではないのだが、今回はこの『2001:キューブリック、クラーク』を読みながら『2001年宇宙の旅』を何年かぶりに観なおしていたらいつのまにか2019年になっていた。いやーほんとうにおもしろいだ。『2001年宇宙の旅』ってなんというのかな、完全に理屈抜きにして観ても壮麗で美しく、音響的にもストーリー的にも意味深でおもしろいんだけど、こうして完全なる補助線が引かれた上で読むと、その意味深さの背後にどれだけの意図と苦悩による決断が含まれていたのかがみえてきて、異常にたのしい映画なんだよね。 この、2018年が『2001年宇宙の旅』の公

    SF映画の新たな時代を切り開いた傑作の裏側を描くドキュメンタリー本──『2001:キューブリック、クラーク』 - 基本読書
  • 職場に横行する性差別との戦い方──『フェミニスト・ファイト・クラブ 「職場の女性差別」サバイバルマニュアル』 - 基本読書

    フェミニスト・ファイト・クラブ 「職場の女性差別」サバイバルマニュアル 作者: ジェシカ・ベネット,Jessica Bennett,岩田佳代子出版社/メーカー: 海と月社発売日: 2018/08/31メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る昨今職場(やその他の場所)での性差別といったものは徐々に問題として取り上げられる機会が増え、解消に向かっているようにも見えるが、実態としてはまだまだ道半ばといったところだろう。だいたい「完全に差別が解消された状況」などというものがあるのかどうかもわからないが(終わりなきバランス調整があるだけかもしれない)。 「差別」というと強い言葉に聞こえる・見えるが、実態としては差別をしている側がそうと意識せずにしているケースもある。たとえば女性はお茶くみやゴミ出しをして当然だと「一言も言っておらず」、勝手に女性がやってくれているのだから好きでやっ

    職場に横行する性差別との戦い方──『フェミニスト・ファイト・クラブ 「職場の女性差別」サバイバルマニュアル』 - 基本読書
    mugi-yama
    mugi-yama 2018/10/21
    あとで読む/(常々こっちの方が主戦場だろうと思ってるのだけど私ゃ)/重箱の隅ですけど「やたらめったに」って言い方もあるの?
  • 世はまさに大監視時代──『超監視社会: 私たちのデータはどこまで見られているのか?』 - 基本読書

    超監視社会: 私たちのデータはどこまで見られているのか?ブルース シュナイアー 草思社 2016-12-07 Amazon 現代は、誰もが携帯/スマホを持ち、車も家具もネットとつながっているのが当たり前になり網羅的な大量監視が空前の規模で実行される時代である。Kindleがない時代はをどこまで読んだか調べるのは困難だったが今では読む速度、どこまで読んだか(読めなかったか)まで含めすべてAmazonに筒抜けで、自動車に搭載されたGPSデータを自動車会社は取得し誰が法を犯しているのかまで含め把握している。 世はまさに大監視時代 自動車にのらなくとも携帯/スマホから位置情報を取得することは容易で、アメリカの国家安全保障局(NSA)は基地局、Wifiネットワーク、GPSデータを用いるアプリなど様々な手段を用いて監視対象者とその関係者の情報を集めている。NSAは携帯電話の電源が切られていても居場所

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