今、我々が目にしているのは、しょせん、人手不足にならなければ、働く者に分け前は回って来ないという単純な現実だ。労働生産性が向上して豊かになると言うよりは、人手不足にやむを得ず、労働生産性を向上させていく。人手不足になれば、24時間営業や多頻度配達といった労働力の薄利多売はできなくなり、無人レジや宅配ボックスなどの省力化投資をするようになる。資本主義は、人手不足でしか分配を解決できないようだ。 ……… ロバート・ライシュの『最後の資本主義』は、米国の政治経済の側面を鋭くえぐるものだ。「自由市場」か「政府」かという見せかけの選択に隠され、市場のルールは、大企業、ウォール街、富裕層を利する不公平なものになっており、その是正には、中間層と貧困層による「拮抗力」が必要だとする。それは、栄光の1960年代には、米国が持っていたものであり、衰退してしまった力の復活ということになる。 ライシュは、これに楽