本研究の目的は、公共図書館をだれが利用しているのか、またそれはだれに利用されるべきと考えられているのかについて、平等利用の観点から大規模ウェブ調査の分析をもとに検証することである。分析の知見は次のとおりである。第一に、図書館利用には学歴がもっとも強い影響力をもっていた。第二に、非大卒者よりも大卒者のほうが、また滞在型の新しいサービスへの期待度が高い者のほうが、利他的に公共図書館の存在意義を重視していた。
本研究の目的は,2000 年代前半の国立大学改革によって変化した国立大学図書館組織を類型化したうえで,その特徴を解明することである。現在の国立大学図書館組織を8 つに類型化し特徴を明らかにした。組織分類の特徴から,1)法人化前の組織形態を継続する組織,2)学内の他部門と統合した組織,3)図書館以外の業務も担当する組織と,組織が多様化していることを確認した。また,法人化前後の比較や学部数による大学規模の分析から, 大規模な国立大学(8 学部以上)が法人化前の組織体制を継続しているのに対し,中小規模の大学(7 学部以下)では他部門組織との統合,統合に伴う管理職数の削減,図書館管理職の職位の格下げが行われていることが明らかになった。そして,これら組織再編の多くが,大学全体の業務の合理化・集約化を目的に行われた。
Online ISSN : 2189-8278 Print ISSN : 0913-3801 ISSN-L : 0913-3801
2023年G7開催後,オープンサイエンスについて議論が高まっている。日本でも研究のオープンアクセス(OA)化を求めるポリシーが検討され,研究を迅速に発見・アクセスでき,再利用可能な形式やフォーマットで提供することへの需要が高まっている。この動きの中で2022年に筑波大学の発案でスタートしたJapan Institutional Gateway(JIG)は,大学の規模に関係なく,どの機関でもオープンサイエンスを実践することができる新しい学術出版形態のオプションとなっている。最大の特徴は人文社会科学分野の日本語論文を2か国語でOA出版することが可能な点であり,一定の条件を満たせば,国際的な論文データベースに論文が収載される。言語や分野に縛られず研究成果を発表できるだけでなく,オープンサイエンスを実践してその効果を個々の研究者が体験できるモデルとなっている。
学術情報処理研究(Journal for Academic Computing and Networking)は,大学ICT推進協議会(AXIES)が発行する論文誌です.大学等高等教育・研究組織に関連したICT技術開発,情報基盤システム構築,認証基盤・情報ネットワーク設計および運用,情報セキュリティマネジメント実践,ICT を活用した教育実践等の研究結果などを取り扱っています.年一回の発行の査読論文誌であり,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス4.0 CC-BY を採用したオープンアクセス誌として,J-STAGE上で公開されています.論文・レター・解説/招待論文を収載しており,DOI, ORCID に対応しています.研究教育機関におけるICT利活用や情報基盤設計運用,情報処理教育に携わる組織の教職員や技術系職員,学生,関係企業のエンジニアの方々から広く投稿を募ります. 第1巻〜第25巻まで
「オープンサイエンスにまつわる論点 変革する学術コミュニケーション」 一般社団法人 情報科学技術協会 監修 南山 泰之 編 池内 有為,尾城 孝一,佐藤 翔,林 和弘,林 豊 著
国立大学図書館における除籍の現状を規程や課題,再活用方法から明らかにし,今後必要な方策を検討するため,Webサイト分析と質問紙調査を行った。その結果,館によって規程の充実度に差があること,現場での課題は書架スペースの確保,業務上の負担等であることなどが明らかになった。今後詳細な公開規程を備えていくことと,全国的なシェアード・プリントを提案する。業務上の負担が大きいという館が多い以上,すぐに取り組むことは難しいだろうが,現状を改善するため少しずつ検討を進めていく必要がある。
「オープンサイエンスにまつわる論点 変革する学術コミュニケーション」 一般社団法人 情報科学技術協会 監修 南山 泰之 編 池内 有為,尾城 孝一,佐藤 翔,林 和弘,林 豊 著
冊子で定期購読をしていた学術雑誌は,1990年代に電子ジャーナルが登場すると,大学図書館ではビッグディール契約と呼ばれるコレクション契約を締結するようになった。ビッグディール契約はシリアルズクライシスに歯止めを掛ける一定の効果があったが,学術雑誌の価格上昇問題は解決しておらず,その対応策として注目されてきたのがオープンアクセスである。そうした流れから,転換契約と呼ばれる,出版社に対して行われる支払いを購読料からオープンアクセス出版料にシフトさせることを意図した契約を締結する大学図書館が増えてきた。本稿では,転換契約やその課題等を解説すると共に,論文公表実態調査等のオープンアクセスに関する大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)の取り組みを紹介し,今後の展望等を述べる。
Online ISSN : 2424-2535 Print ISSN : 1340-3753 ISSN-L : 1340-3753
日本で唯一の法的に実施が定められたウェブアーカイブである、国立国会図書館による「ネットワーク系電子出版物の制度的収集事業(通称 WARP)」がどのような議論を経て形成されたのかを論じた。国立国会図書館の納本制度調査会/審議会の議事録から、議論を整理した。第一に、ウェブアーカイブを既存の納本制度の枠組みの中に入れるか/新たな制度を外側に設けるかが議論の中心となり、新たな枠組みを設けることが決まったことを明らかにした。第二に、公的機関/民間を問わない包括的なウェブアーカイブ事業の形成も視野には入っていたが、2000 年代初頭の議論の中で「公的機関」のみを制度的収集の対象とすることが決まったことを明らかにした。
研究データを保存するためのデータリポジトリには,データファイルに加えて,生成された研究データのコンテキストを表現するための複雑なデータ構造を扱うことが求められる.この課題を解決するための仕組みとして,「研究データパッケージング」という考え方が提案されている. 本発表では,提案されている研究データパッケージングフォーマットのひとつであるROCrateを用いて,データの作成者,装置・試料の情報,ファイル・ディレクトリの構成などの多様なメタデータを保持しながら,データリポジトリに対して機械的かつ大量のデータ登録を試行した事例を報告する.
博士論文の体裁や公表,その利用に係る実状と課題を明らかにするための事例研究として,2013年4月以降に九州大学が公開した博士論文の書誌情報と全文ファイルのページ数,閲覧回数を解析した.論文の執筆言語を分野別に見ると,理系分野ほど英語の論文が多く,文系分野ほど日本語の論文が多い傾向が見られた.一方,学術分野のように審査部局によって言語の選択状況が異なる事例もあった.論文ファイルのページ数は,特に文学,教育学,法学の各分野で多くなる傾向が見られた.言語別のページ数に有意な差は認められなかった.言語別の論文の閲覧回数については,英語論文1編当たりの閲覧回数が日本語論文の閲覧回数を大きく下回る結果となった.
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