「なぜ会社は研究者に学術論文を書かせるのですか」 たまらず聞いてしまった。ある大手エレクトロニクス・メーカーの研究開発担当の方から、研究所改革についてのヒアリングを受けたときのことである。 前にも書いたが、私には企業の研究所に勤務していた経験がある。自分の成果については、当然のように学会で発表し学術論文を書いた。言いつけ通り、たくさん発表し書いたから、たいそう褒められもした。 でも、なぜ褒められるのか、なぜ企業が学会発表を奨励するのかが不思議でならなかった。どう考えてもデメリットの方が多いからである。 学会発表には、時間と費用が掛かる まず、学会で発表するには多大な時間と費用を要する。学会発表のためだけの実験やデータ収集という作業が結構発生するのである。加えて、出張費用、学会の参加費用などが掛かる。海外の国際会議などで発表する場合はなおさらだ。それらに掛かるコストは、すべて企業が負担するこ