物理学者が解き明かす、いずれ終末を迎える宇宙で私たちが生きる意味 『時間の終わりまで』読みどころ【1】 科学は、人間が死を恐れるがゆえに発展した その間も、私はまだ心理学のレポートにてこずっていた。その課題の狙いは、人類はなぜ諸々の営みに取り組むのかを説明する理論を作ることだったが、いざ何か書こうとすると、そのテーマはあまりにも漠然としすぎているような気がしたのだ。 もっともらしく聞こえるアイディアをそれらしい言葉で書き綴れば、不出来なレポートでもそれなりに取り繕えるだろう。私は寮で夕食を摂っているときに、ふとそんなことを口にした。すると、ひとりのレジデント・アドバイザー[アメリカの大学で、学生寮の監督にあたり、寮生の生活をサポートし、相談にも乗ってくれる人]が、オズワルド・シュペングラーの『西洋の没落』を読んでみたらどうかと勧めてくれたのだ。ドイツの歴史学者にして哲学者でもあるシュペング