切り紙絵の鮮やかな世界と、建築、室内装飾、司祭服のデザインまで総合的に空間をプロデュースした光あふれる礼拝堂。さまざまな変遷を経て、マティスが最晩年にたどりついた境地とは!? 文=田中久美子 取材協力=春燈社(小西眞由美) 芸術的思考がわかる『マティス 画家のノート』 「私が夢みるのは心配や気がかりの種のない、均衡と純粋さと静穏の芸術であり、すべての頭脳労働者、たとえば文筆家にとっても、ビジネスマンにとっても、鎮静剤、精神安定剤、つまり、肉体の疲れをいやすよい肘掛け椅子に匹敵する何かであるような芸術である。」(『マティス 画家のノート』二見史郎訳/みすず書房) これはインタビュー、対話、手紙、覚え書、友人・知人等による記録など、マティスの文章や言葉を集めた『マティス 画家のノート』にある有名な言葉です。野獣と呼ばれたマティスはその後の画家人生で、観る人にとっての肘掛け椅子になるように画家の