1988年,TRONプロジェクトの推進母体としてトロン協会が発足した。 1984年にTRONプロジェクトが始まってから22年が過ぎた。これだけの時が過ぎると世の中の評価が落ち着きそうなものだが,現在でもTRONに対しては賞賛から批判までさまざまな見方がある。なぜ,長い年月を経てもここまで評価が分かれるのか。1980年代後半の5年間,坂村健氏の近くで取材をしていた記者の一人として思うところを書いてみたい。 結論から言うと,我が国のエレクトロニクス産業においてTRONプロジェクトが果たした役割はとてつもなく大きい。とりわけ,ITRONから始まった組み込み分野での貢献は特筆に値する。TRONを抜きにして携帯電話機などの組み込み型の国内電子産業がここまで発展したか否かについては見方が分かれるだろうが,そうした議論に意味はない。別のものがその役割を果たし得たかもしれないということを言い出せば,米Mi