岐路に立つ査読と、その変化に踏み込むPublons 筑波大学学術情報部:松野 渉(まつのわたる) 1. はじめに 学術論文の出版とそれを巡る一連の学術コミュニケーションにおいて、投稿論文を審査するプロセスである査読は無くてはならないものである(1)。しかし近年、査読制度に起因する研究不正や、査読の実施を詐称する「ハゲタカ出版社」(2)の出現、論文数に対する査読者の不足など、査読を取り巻く状況には多くの問題が生じている。学術コミュニケーションの世界では現行の査読を取り巻く状況を改善するべく様々な取り組みが行われているが、本稿では「査読登録サービス」として近年大きく注目を集めるPublons(3)に焦点を当て、サービスやステークホルダーとの連携、その他の様々な取り組みについて概観する。 2. 査読の抱える問題 2.1. 査読とは 査読とは、学術雑誌に投稿された論文を、外部の研究者が査読者となっ
2019年3月13日、査読登録サービスPublonsが、オープンアクセス(OA)出版を手掛けるHindawi社と、査読プロセスの改善・高速化のためパートナーシップを締結したことを発表しました。 Publonsの査読者検索サービスであるPublons Reviewer ConnectをHindawi社の査読管理システムに組み込むこと、2019年3月中に、編集者による査読者選定の支援のためReviewer ConnectをHindawi社の231の査読誌に実装することが紹介されています。 また、Hindawi社は、査読のスピード向上と査読者の負荷軽減のために、PublonsのReviewer Availability機能を組み込み、研究者への査読依頼時に、査読を引き受けられる状況にあるかを参照できるようにすること等も計画しているとあります。 Publons partners with Hind
【寄稿】 査読歴も研究者評価の対象に 宮川 剛(藤田医科大学 総合医科学研究所 教授) 小清水 久嗣(藤田医科大学 総合医科学研究所 准教授) 報われない査読と困難な査読者探し 研究者の研究業績は,査読のある国際誌での論文の質と量によって主に評価される。科学研究費などの申請時の審査や事後評価,人事の際などの研究者の評価では,査読付き論文の占めるウェートが極めて高いのは間違いない。これは研究評価,さらには研究者の評価が,査読という営みに強く依拠していることを意味している。 しかしながら,ほとんどのジャーナルでは査読は匿名で行われ,その実績が表に出ることは従来,ほぼなかったと言ってよいであろう。履歴書に査読歴を記載する研究者が一部存在していたが,これは自己申告であり,裏付けるエビデンスもないため,実績として十分に評価されることはほぼなかった。査読の作業は金銭的に無報酬であるだけでなく,コミ
【interview】 オープンアクセスの進展と査読のこれから 佐藤 翔氏(同志社大学免許資格課程センター准教授)に聞く 学術情報をインターネットから無料で入手でき,技術的・法的にできるだけ制約なくアクセスできるようにする「オープンアクセス(Open Access;OA)」が進展している。その一方で,適切な査読を行わずに不当に利益を得ようとするOA雑誌の存在が指摘されており,「ハゲタカジャーナル」として日本のメディアでも報道されるようになってきた。 論文投稿あるいは文献検索などの機会が多い医療者にとって,OAは身近な話題となりつつあるだろう。OAは今後どのような形で進展するのか。その際に生じる課題にどう対応すべきか。図書館情報学を専門とし,OAの問題に詳しい佐藤翔氏に聞いた。 OAメガジャーナルの興隆と停滞 ――学術論文のOA化の進展状況から教えてください。 佐藤 OA運動が成立した契
オープン査読という珍しい対象に関する研究成果により、オープン査読に対して持たれている一般的な懸念が和らぎました。学術雑誌がオープン査読を採用することにより、査読者が査読を控えたり、論文の採択の可否に影響がでたりはしない、というのは特筆すべき結果です。 同時に、Nature Communicationsに2019/1/18に掲載されたこの分析によると、オープン査読においても査読者は匿名を希望すること、また、一般的な査読プロセスの場合と査読にかかる時間はそれほど変わらないことも分かりました。 なおオープン査読とはここで、論文とともに査読結果が公開される査読方式のことを言います。 「査読をオープンに出版することの意義は、透明性や説明責任の観点から、極めて明確と思います」と、2017年にオープン査読に関する調査をしたオーストリアのグラーツ工科大学の情報科学者Tony Ross-Hellauer氏は
近代の学術コミュニケーションを最も特徴づけているのは査読制度の存在である。しかし増大し続ける研究者数とその生産論文数に,査読制度は対応できておらず,限界を迎えつつある。その結果,従来から存在した,査読者による不正や査読者のバイアス等の問題に加え,近年では査読者の不足,詐称査読,投稿者による不正等の新たな問題が起きている。これらの問題に対応するため,Publons やポータブル査読,オープン査読,査読の質保障等の新たな取り組みが現れている。しかしこれらの延命措置によって査読制度を維持し続けることができるのか否かは現状,未知数である。
Scholarly Kitchenは、11月1日、"Guest Post: Help TRANSPOSE Bring Journal Policies into the Open"(試訳:ゲストポスト:TRANSPOSEがジャーナルポリシーのオープン化を促進する)と題する記事を掲載した。これは、オープン査読、共同査読(co-reviewing)、プレプリントなどに関するジャーナルポリシーのデータベース構築を目指すイニシアチブTRANSPOSE (TRANsparency in Scholarly Publishing for Open Scholarship Evolution) を紹介したもの。 本記事は、TRANSPOSEの活用シーン、同様のサービスを提供するSHERPA/RoMEO※で補いきれない点、ジャーナルポリシーの一貫性の欠如や曖昧さなどを紹介。同イニシアチブの取り組みが、編集
査読情報とORCIDレコードとをつなぐ機能の提供を開始してから2年、ORCIDは、9月11~17日に開催されたPeer Review Weekにあわせ、その進捗を公表した。 現在、この機能を実装する組織はAmerican Geophysical Union(AGU)、F1000、Publonsなど10組織であり、6月時点でORCIDレコード9,800に査読活動情報が付加されている。査読者認識サービスを提供するPublonsから得られた査読数は13万5,604件と、Publonsだけで査読活動情報を持つORCIDレコードの92.8%を占める。 この件数は全ORCIDレコードの1%に満たないものの、Aries SystemsのEditorial ManagerとClarivate AnalyticsのScholarOneが2018年早々に機能統合を予定しており、今後件数の増加を見込んでいる。
論文査読は学術ジャーナル出版の根幹を支える重要な役割を果たしているが,科学の発展のために学術コミュニティーが負うべき必要な貢献として認識され,その作業を担っている査読者の功績が評価されることはまれだった。2012年に設立されたPublonsは,「査読をより迅速で,効率的かつ効果的にすることで科学を加速化する」を使命に掲げ,研究者の査読活動を支援するツールを提供している。 研究者がPublonsにアカウントを開設すると自身のプロファイルと統計閲覧のページが付与される。 プロファイルページには実施した査読を登録することが必要になるが,査読後にジャーナル編集部門から届くレビュー受理のメール(Thank youメール)をPublonsに転送するとPublonsが登録を代行してくれるので研究者の負担が軽減される。また,Publonsと提携しているジャーナルの場合は自動で登録が完了する。 Publon
特集:「研究倫理」の編集にあたって 2015年度の最後となる特集は「研究倫理」です。 “科学(学術)情報流通における倫理問題は,実に古くて新しい問題である。問題の現象面に関しては,発生するたびに新聞などの媒体でも報じられているので,ことさら言及する必要はなかろう。問題は,情報技術の進化と共に科学情報流通の速度が急激に速まり,日常生活の様々な側面に影響を及ぼす速度が速くなり,大なり小なり影響を蒙る。~中略~ 我々は不正を単に倫理的に断罪すれば良いのであろうか・・・” (本紙2001年12月号:特集「科学情報の倫理」前書きより) 前回の関連特集からはや15年近くが経ち,ICT技術の発展により研究活動は大きくその様相を変えています。インターネットのさらなる普及と研究情報のオープン化が進むなか,問題は国境や専門分野を越えてより複雑に,より深化しつつあるように見受けられます。本年1月に閣議決定された
2015年5月19日、SAGE社は、査読サービスの評価を行い査読者の貢献を認識し、ピアレビュープロセスを改善するために、レビュー掲載サイトPublonsと協力関係を締結したとのことです。また、6月1日には、米国微生物学会がPublonsと協力関係を結んだとのことです。 SAGE announces pilot partnerships with Publons(SAGE、2015/05/19) http://www.uk.sagepub.com/aboutus/press/2015/may/19.htm Sage and Publons announce peer review pilot(Research information、2015/05/20) http://www.researchinformation.info/news/news_story.php?news_id=1909
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