埼玉県川口市のJR西川口駅周辺には、本場の味のままで日本人好みにアレンジしていない中華料理、「ガチ中華」の店が集まっている。中でも山東省料理店「異味香(イウィシャン)」は、その先駆けとして30年以上前から営業を続けている。 2代目店主の山田慶忠(よしただ)(55)は、山東省をルーツに持つ孔子の73代目の子孫。日本人の好みに寄せた創作メニューも提供する一方で、「土台にあるのは店のアイデンティティーでもある父から受け継いだ山東省の味」と胸を張る。 きっかけは約60年前にさかのぼる。山東省出身の祖父が長野県生まれの祖母と結婚し、1960年代に来日。鋳物製造の経験を生かした職に就くため、鋳物の街だった川口に移り住んだ。引退後は西川口でラーメン店を開業。「本場の中国人が作った」と評判になって繁盛した。 祖父と同じく料理人になった父の孔憲蕚(コンシェンウォ)は、都内の中華料理店などで修業し、91年に「