九州から南へ遠く離れた海域に浮かぶ奄美群島。その中心をなす奄美大島は、琉球文化圏とも異なる独自の文化が育まれてきた島としても知られている。アニミズム的な土着信仰やそこから発生した多くの祭祀のほか、“島唄”と呼ばれる個性的な歌の文化が息づく地としてご存知の方も多いことだろう。 そんな奄美大島に伝わる島唄の伝統を継承する唄者(奄美では歌い手のことをこう呼ぶ)のひとりが里アンナだ。ポップスやミュージカルの世界でも活躍する彼女だが、そのルーツは高校卒業するまでの時期を過ごした故郷・奄美大島の島唄。最新作『紡唄』はゲストを一切招くことなく、奄美の島唄の数々にひとり挑んだ意欲作である。近年はアルゼンチンのマリアナ・バラフと競演し、ワールドミュージック・リスナーにも広く認知されつつある彼女だけに、本作もまた、さまざまなアプローチによって島唄の魅力を伝えてくれる素晴らしい内容となった。彼女の話を通じ、南洋