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ブックマーク / diary.uedakeita.net (7)

  • aikoの歌詞の怖さについて - 真顔日記

    aikoは常に「あたしとあなた」のことを歌う。そしてaikoを聴くとき、私は男でありながら「あたし」になっている。この話は何度か書いた。私のなかに住む背の低い女をaikoが引きずりだしてきたという話である。aiko音楽の前では、私は平気で性別を飛び越えて、「俺はaikoだ」と断言してしまえる。「俺とはaikoの別名だったのだ」と言ってしまえる。 それはまあ、いいだろう(社会的にはよくないが)。 さて、私は男として生きている。つまりaikoの曲を「あなた」の立場で聴くことも可能だということだ。しかし、「あなた」の立場でaikoの曲を聴くことは怖い。 怖さのひとつは、いわゆる「女の計算の怖さ」なんだが、これは今回の主題ではない。それでもいちおう具体例をあげておくと、 愛しい人よ くるくると表情を変えながら あたしの手のひらの上にいてね 『恋人同士』 あなたが悲しくなった時 見計らって逢いに行

    aikoの歌詞の怖さについて - 真顔日記
    theband
    theband 2017/03/05
    “女の打算と愛、どちらが怖いかといえば、女の愛のほうが怖い。女の愛はその極点において、男に神であることを求める/aikoに「男」はおらず「あなた」しかいない。「男」は取り替え可能。「あなた」は取り替え不能”
  • パン屋のおばさんにオシャレな問いかけをされた - 真顔日記

    現在、私の右ほほには傷がある。 誰かとケンカしたわけではない。飼いネコに引っかかれたのである。抱きかたがまずかったのか、ネコが落ち着かないようすでピョンと飛び降りようとし、私のほほに爪をたてたのだ。マンガでしか見たことのないような分かりやすい傷である。しかし今の生活では、顔に傷があってもたいした問題ではない。一週間もすれば消えるだろう。 今日、パン屋のおばさんに言われた。 「その傷の理由、聞いてもいいのかしら?」 このオシャレな問いかけはなんなのか。ちょっと笑いそうになったじゃないか。完全に不意をつかれたから、「いやあ、ネコに引っかかれちゃって……」と、ものすごく凡庸な返答しかできなかった。ぜんぜんオシャレじゃなかった。 あれはどうすればよかったのか。向こうがオシャレに問いかけてきたんだから、こちらもオシャレに返すべきだったんだが、いまだに正解がわからない。帰宅後もずっとモヤモヤしている。

    パン屋のおばさんにオシャレな問いかけをされた - 真顔日記
  • aikoが「好きだけじゃ済まなくなりそう」と言い出した時の、まだ変身を残していたのか感について - 真顔日記

    長いタイトルがそのまま今回の要約である。 今日も日常におけるひとつの所作としてaikoを聴いていたんだが、『秘密』という曲でaikoが「なんだか好きだけじゃ済まなくなりそうで」と歌っているのを聴いて、あらためて衝撃に打たれた。 はじめにみなさんに知っておいてほしいのは、aikoの使う「好き」は、普通の人間の「好き」とは別ものだということである。普通の人間が日常的にホイホイ使う「好き」と、aikoの「好き」を同一にみなしてはならない。たとえば気まぐれで入ったカフェの珍デザートをべた女子の言う「あたしこれ好きかもー」をカナブンとするならば、aikoの「好き」は巨大なゾウの足である。ズシンという音の一発でカナブンはつぶれて死ぬ。 aikoが「好き」と言った場合、「あなたのことで18年200曲書けます」くらいの意味が平気で込められているのであり、この人が何かを「好き」と言ったならば、それはもう身

    aikoが「好きだけじゃ済まなくなりそう」と言い出した時の、まだ変身を残していたのか感について - 真顔日記
  • 「ワレワレハ宇宙人ダ」に込められた気遣い - 真顔日記

    「ワレワレハ宇宙人ダ」 宇宙人というのは、そう自己紹介することになっている。いつからそんな話になっているのかは分からんが、宇宙人は銀色の体と大きな頭を持ち、宇宙船で地球に降り立ち、「ワレワレハ宇宙人ダ」と自己紹介することになっているのである。 初めて聞いた時、私はこのセリフに感動した。宇宙人というのは当にすごいと思った。さすがは宇宙船を作るだけある、高度な文明をそなえているだけあると思った。 感動の理由を説明したい。 逆の立場で考えてみればよい。遠い未来、文明を発達させた我々が別の生命体のいる惑星に着陸する。異変に気づいた生物たちが、警戒するような表情で我々の宇宙船を見守っている。そこでの第一声。 ここで「我々は宇宙人だ」と言えるか? 「我々は地球人だ」と言ってしまうのではないか? はじめて降り立った惑星で未知の住人に自己紹介するという状況で、宇宙人は「ワレワレハ宇宙人ダ」というかたちで

    「ワレワレハ宇宙人ダ」に込められた気遣い - 真顔日記
    theband
    theband 2016/10/05
  • aikoとゴリラの綱引き - 真顔日記

    aikoを聴いていると、自分の中に背の低い女が住んでいることが分かる。 この数年強く実感していることだ。aikoを聴くほどに、自分が曲中の「あなた」ではなく、「あたし」に感情移入していると実感する。私は一人の背の低い女となってaikoを聴いている。三十をすぎた男の内側に、背の低い女が住んでいた。 一方で、ゴリラを見ていると、ゴリラに対する強烈な憧れを感じる。これも現在の自分が実感していることだ。メディアに流通するイメージとしてのゴリラ、文化系の男が妄想するひとつの理想像としてのゴリラ、野性、腕力、暴力、あらゆる危険な記号の集約点としてのゴリラ。それに私は憧れる。 以前、これをシンプルに「ゴリラワナビー」と名づけた。ゴリラがバナナをむく、ゴリラがうんこを投げる、ゴリラがブランコがわりにタイヤで遊ぶ。その挙動のひとつひとつに魅了される男。ゴリラへの同一化を求める、現代のひよわな男たち……。 と

    aikoとゴリラの綱引き - 真顔日記
  • B'zの稲葉と同居しても自分は歌がうまいと思えるか? - 真顔日記

    今の家に住みはじめるまで、私は一人のネコ好きを自認していた。なんせ実家でもネコを飼っていたし、犬とならば迷わずネコを選ぶほどのネコ好きである。 しかし、三十一歳女性と同居するようになり、この女の圧倒的なまでのネコ好きぶり、というかネコ狂いと言ってもいいような日常を目にした瞬間、気軽に自分はネコが好きだと言えなくなった。 「好き」というのも相対的なものである。たとえば、あるアーティストのヒット曲をちらっと聞いて「好き」と言うのも、インディーズ時代から何十年と追っかけて「好き」と言うのも、言葉にするならば「好き」なわけである。 このズレから「古参ファンとにわかファン」のような揉め事も起こるんだろうが、その意味で言えば、私と同居人は、同じネコ好きでもレベルがぜんぜん違う。 そして圧倒的な存在と同居したとき、人は自分の半端さを思い知らされる。私はこの数年、もう気軽にネコ好きを自称できなくなってお

    B'zの稲葉と同居しても自分は歌がうまいと思えるか? - 真顔日記
  • 美容師が悟りをひらくとどうなるか? - 真顔日記

    十年前、まだ美容院に行っていた頃のこと。 その美容院は大きなところで、数十人の美容師が在籍していた。だからなのか、ランク制をとっていた。いちばん下っ端は普通のスタイリスト、すこし偉くなるとトップスタイリスト、その上にはサロンディレクターがいて……という感じだった。それぞれに料金が違うわけだ。私を担当している人のランクは「トップスタイリスト」で、名前は藤村さん(仮)といった。店に行くたび、次のように挨拶されていた。 「よろしくお願いします、トップスタイリストの藤村です」 これでいつも笑いそうになっていた。「すげえ自画自賛してくるじゃん」と思ったからである。自分のことをトップ扱い。まあ、自分のランクだから名乗らなきゃ仕方ないということなんですが。 藤村さんは謙虚な人だったので、その後は普通に髪を切られるだけだったが、いっそのこと自信満々でいてほしいと私は思っていた。ひたすら自画自賛する美容師を

    美容師が悟りをひらくとどうなるか? - 真顔日記
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