一年に大体一冊ずつ出ていた、ミステリー文学資料館編『古書ミステリー倶楽部』シリーズ(光文社文庫)も、とうとう今月出た第三弾で終るらしい*1。最後の三冊めにも、宮部みゆき「のっぽのドロレス」や長谷川卓也「一銭てんぷら」、小沼丹の随筆など、珍しいものが入っている。乱歩の「D坂」も入っているが、なんと「草稿版」である。 一冊めには、清張の「二冊の同じ本」が入ったので、以前ここで紹介した。 二冊めに収録されて、とりわけ嬉しかったのは、皆川博子「猫舌男爵」である。千街晶之、日下三蔵など実在の人物による、虚構(つくりごと)の往復書簡(またはメール)を挟みながら、「ヤマダ・フタロ」(山田風太郎であることは容易に予想できるだろう)に「眷恋(けんれん)する」*2ヤン・ジェロムスキ(おそらくは架空の人物)の孤軍奮闘、いな独り相撲を軸に話が展開する。ジェロムスキが作中で、ポーランド語訳に取り組んだのが「ハリガヴ