小説家の処女作にはその作家のすべてが含まれるといったことは,よく言われることだ.もちろんすべての小説家にあてはまることではないけれども,そのように考えてみると,何人かの小説家のことが思い浮かんでくる.ここでは,そうした小説家であろうと私が考える,山崎豊子と,その処女作「暖簾」(のれん)について書いてみたい. 私が初めて山崎豊子の小説を読んだきっかけは,詳しい状況は忘れたが,大学のころ,友人が白い巨塔をすすめてきたことであった.それから山崎の長編はいろいろ読んだが,内容はすっかり忘れてしまった.ちなみに,私には,フジテレビで放映されたドラマの白い巨塔 (Wikipediaの記事) が印象に残っている.最初から最後まで見たテレビドラマはこれが最後で,今後もう二度とないかもしれない.恥ずかしながら,年甲斐もなくぼろぼろ泣いてしまう回もあった.特に,唐沢寿明はいい役者だと思った. 話をもとに戻すと